KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百九拾伍・・・歴史の狭間で

「アリさんたちが、
 急ぎ足でご帰宅でございます」

膝をかかえこんでいる弟子の北小岩くんは、
耳を体長1センチのものたちに近づけた。

「なになに?
 もうすぐ嵐になるのでございますか。
 ですから、巣に一目散なのですね」

幼少の頃よりアリとの対話を試み続け、
ついにコミュニケーション可能になった。
一団にひときわの巨躯を誇り、
華麗なステップの個を見つけると。

「もしやあなたさまは、
 蝶のように舞い蜂のように刺す
 モハメッド・アリさんの親族でございますか」

アリ 「よくわかったな。
 確かに俺は、アリの血筋だよ」

満足そうにうなずきながら、母屋に戻る弟子。
アリにさえ、
たやすく欺かれてしまうほど人がよい。

北小岩 「そういえば、
 本日は歴史上の人物等の子孫が
 一同に会する予定ですが」

チンチーン!

複数の
客人
「たのもう」
小林 「お見えになったな」

おまぬけ先生も奥からまぬけ面をさらしにきた。

北小岩 「わたくし、
 今日と言う日を待ちわびておりました。
 みなさまはどなたの子孫なのですか」
小林 「聞いて驚くなよ。
 もちろんお前は龍馬はんを知っとるよな」
北小岩 「もちろんでございます。
 尊敬して止みません」
小林 「龍馬はんが中心となって、
 画期的な隊をつくったな」
北小岩 「わかりました!
 みなさまは海援隊の方々の
 子孫でございますね」
客人A 「いんにゃ、あしらぁの先祖は
 海援隊に影響を受けて、
 それに似た隊をつくっちゅう」
北小岩 「と申しますと?」
小林 「彼らは海援隊ではなく、
 『海綿隊(かいめんたい)』の末裔や。
 用のない時に充血して、
 無意味に肥大しとった隊や」
北小岩 「なんと!」

「ハロー!」

小林 「異国の者がやって来たわ。
 彼は正真正銘ビッグな男の流れやで。
 日本の開国に深くかかわった。
 ヒントは船や」
北小岩 「黒船・・・。
 ペリーさんの血統でございますか」
異人 「アタラズトイエドトオカラズネ。
 ワタシノグランドファーザーノ、
 ソノマタグランドファーザーガ
 ライニチシタノハ、
 クロチクビフネ(黒乳首船)デシタ」
小林 「どでかい黒乳首の模型を乗せて、
 外国の女性は全員これほど乳首が黒いと
 驚愕させて、開国を迫ったんや」
北小岩 「・・・」


ブォブォブォブォ〜

小林 「見事な尺八や」
北小岩 「唐から戻り虚無僧として
 活躍された方の子孫・・・。
 うげぇ!
 なぜ下半身丸出しなのでございますか。
 それもブツにコンドーさんが
 装着されておりますが」
小林 「彼はな、虚無僧ではなく、
 『ゴム僧』の後裔なんや。
 常にゴムをつけていて、
 尺八を吹きながら、
 おなごからOKがでれば
 下の方も別の尺・・・」
北小岩 「先生・・・。
 その先はおっしゃらなくて
 結構でございます・・・」


先生ごときが、
名立たる人々の子孫と
知り合いであるはずがない。
歴史の狭間に消えていった
どうしようもない人々。
その末裔と親交があるだけなのだ。

歴史を動かした人物の影には、
恥部とでもいうべき者たちが
数多存在したということだけは、
心しておきたい。

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2010-05-30-SUN

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