KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其其の弐百七拾九・・・謝罪


「どこからか枯葉が飛んでまいります。
 お家の前が吹き溜まりなのでございますね」

枯葉の季節は過ぎているのだが、
小林先生宅門前には落ち葉や虫の死骸、
エロ本の切れ端などが溜まってしまうのだ。

「立派な師が住んでいらっしゃるのですから、
 毎日掃除しないわけにはゆきません」

箒を持つ手に力がこもる。

「あっ、石ころが」

女の人が押してきたバギーに、
コツンと当たる。

女の人 「何してんのよ!」
北小岩 「申し訳ございません!」
女の人 「私の大切な赤ちゃんに当たったら、
 どうやって責任とるのよ!」
北小岩 「輪をかけて、申し訳ございません!」

不器用な男は、
頭を深々と下げたまま微動だにしない。
下げ方が半端でなく、頭が両足の間をくぐり、
今にも尻につきそうなほどだ。

女の人 「何の誠意も感じられないわ。
 くらえ!」

ありったけの力で、バギーを弟子にぶつける。
それもまた、赤ちゃんにとって
危険なことだと思うのだが。
北小岩くんはドブのふちにいたので、
その体勢のまま落ちてはまってしまった。

女の人 「いい気味ね」


それから30分ほどたった頃であろうか。

小林 「何しとるんや?
 ノーカットのエロ本でも、
 流れてきたんか」
北小岩 「そうではございません。
 わたくしの力では、
 抜けられなくなってしまったのです」
小林 「そうか。
 しかし、俺の力だけでは無理やな。
 ちょうどいいところに、
 玉の臭親方が通るわ。
 手伝ってくれんか」

玉の臭親方は、序の口で引退した元力士。
町の人々は、敬意を表して親方をつけて呼ぶ。
北小岩くんの首根っこをつかむと、
ドブからつまみだした。

北小岩 「ふう、助かりました。
 ありがとうございました。
 わたくしの不注意で、
 バギーに小石をぶつけてしまい、
 限界まで頭を下げたのですが
 却下されてしまいました」
小林 「そうか。
 神妙な顔をしてお詫びするだけで
 謝罪となった時代は、
 とうの昔に終わったのかもしれんな。
 ついてこいや」

二人は頭を下げたまま全力疾走。
謝罪会と大書された会場に闖入する。
近年、企業等の不祥事が多く、
その度に会見を開いていると記者も大変なので、
まとめて行うことにしたという。

企業の人A 「我が社の超高級フランクフルトを
 馬のちんちんで代用、偽装したのは、
 すべて私の責任です。
 申し訳ございません」

Aと隣のBが深々と頭を下げた。

北小岩 「あれで大丈夫なのでしょうか。
 わたくしの方が何倍も
 深かった気がいたしますが」
その場に
いた記者
「Aはね、謝意を表するために
 3日間小便を我慢した上で
 頭を下げているんだよ。
 Bも3週間大便を我慢している」
北小岩 「なんと!
 わたくしが甘かったようでございます。
 それほどまでに謝罪とは、
 重みのある行為なのですね」

二人の驚異的な我慢により、
謝罪の気持ちは理解された。
次に壇上に上がった者は。

次に
壇上に
上がった者
「私の不徳のいたすところ。
 本来なら切腹して
 お詫びせねばなりませんが、
 これでご勘弁を!」

ズボンとパンツを同時におろし、
秘所に何かを装着。
頭を下げた。

小林 「あかん、『ギロチン』や!
 あいつのチンポ、
 ちょん切れてしまう!!」

先生は壇上に駆け上り、ギロチンを奪った。

小林 「何をしたのか知らんが、
 はやまるんやないで!」


男はその場に泣き崩れた。

後を絶たない不祥事。
苦しそうな顔でうつむく経営者たち。
その光景は日常茶飯になり、
説得力を失いつつある。
とはいえギロチンは、危険すぎますよね。

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2010-02-07-SUN

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