KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百四拾弐・・・チェンジ

「ああ、いい気持ちでございます。
 たまにはゆったりした時間を味わうのも、
 いいものですね」

公園のベンチに一人。
何をするでもなく、あごがはずれたような
間抜けな顔で腰掛けているのは、
弟子の北小岩くんであった。

「昼食のお弁当を食べるサラリーマンが、
 増えました」

数年前までは、閑散としていたこの時間。
不況を反映してか、尻小玉を抜かれたように、
ゆる〜く箸を口に運ぶ年配たちで
ささやかな賑わいをみせている。

「アルマイトのお弁当箱でございますね。
 新聞紙に包まれております。
 そういえば、私の父も、
 お弁当箱はあのようにして。
 あっ!」

風に煽られて、
北小岩くんのところに新聞紙がやってきた。

「キャッチいたしました。
 えっ!」

思わず目に飛び込んできた一面。

「これは凄いことでございます!
 さっそく、先生にお知らせしなければ!!」

新聞をサラリーマンに渡すと、
そのままナンバ走りで家に戻った。

北小岩 「先生!
 ビッグニュースでございます!」

庭の土を盛り、
おっぱいの形にしていた師が振り向いた。

小林 「なんや?
 ビッグアヌスやと!」
北小岩 「いえ、そうではございません。
 わたくし先ほど、
 とてつもないニュースを
 目にしたのです!」
小林 「どこかにパンティのなる木でも、
 生えてきたんかい」
北小岩 「それもなかなか捨てがたいですが、
 まったく違います。
 アメリカで初の黒人大統領が
 誕生したのです。
 それもチェンジをキャッチコピーに
 勝ち抜いたそうです」
小林 「そうか。
 お前の新聞の拾い読みも、
 よしあしやな。
 拾い読みと言っても、
 北小岩の場合は、
 新聞自体を拾って読むから、
 かなりのタイムラグがある危険性を持つ。
 新聞は、一月の日付だったんやないか」
北小岩 「確かめておりません」
小林 「オバマについては、
 誰もがとっくに知っとるわ。
 まあ、ええ。
 それよりも、今からここに
 変わったチェンジをするようになった男が
 来るんや。
 そろそろやな」

「ごめんくださりませ〜」

小林 「さっそくきたわ」

弟子が台所から、いつものように
よっちゃんイカとこぶ茶を運んでくる。

北小岩 「始めまして、北小岩と申します。
 先ほど先生から、
 変わったチェンジをすると
 うかがったのですが、
 オバマ大統領のチェンジと
 何か関係があるのですか?」
チェンジ
する男
「いいえ、まったくありません。
 チェンジするようになったのは」

自分のイチモツを指さす。

小林 「チェンジはんはな、
 女性といたすとその度に
 ちんちんの形がチェンジするように
 なったんや」
北小岩 「なんと!」
チェンジ
する男
「そうなんですよ。
 まるで息子が、
 陶芸の粘土になったような状態なのです。
 昨日彼女と楽しんだ後には、
 ポコチンがしゃもじのように
 なっていましたね」

小林 「彼女がそろそろ
 家庭を持ちたいと思っている、
 あらわれかもしれんな」
チェンジ
する男
「半年ほど前に、
 前の彼女と交わった時には、
 別れる寸前だったのですが、
 イチモツはちくわ型になりました」
小林 「二人の関係は、
 すでに空洞化しとったんやろ」


その他にも、チェンジする男のポコは、
うちわのようになったり、
招き猫の手のようになったり、
ブタの鼻、十手、かたつむり、裸電球のようになったり。
その時々で、自分の意思とは関係なく
形をチェンジするという。
鳳凰や竜虎など、
かっこよさげなものにならないのは、
彼のちんぽの庶民性を物語っている。

アメリカではオバマ大統領という
大器によるリーダーシップでのチェンジ、
かたや日本では小さな性器による
スキンシップでのチェンジ。
思わずお国柄を考えずにはいられない。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2009-05-24-SUN

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