KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百参拾・・・はなを愛でる

「梅の季節やなあ」

「白梅紅梅が、
 可憐に共演していることでございましょう」

「花見の後に、熱燗で一杯なんてのも、ええな」

「頬にポッと、紅い花を咲かせつつ」

「ほな、行ってみるかいな」

馬鹿先生と阿呆弟子は、
春の陽気につられて梅園に向かった。

小林 「春は名のみかと思っとったら、
 ええぐわいにぬるんできとるな」
北小岩 「今までは股間も
 寒さで引き締まり過ぎておりましたが、
 ぶら〜んとできそうでございますね」

傾聴するに値しない会話を続けながら
歩く二人であった。

北小岩 「先生、こんなところに、
 はな見会場がございます」
小林 「俺たちが知らないうちに、
 梅でもぎょうさん植えとったのか?
 まっ、入ってみようやないか」

入園料69円を支払い、入場した二人だったが。

怪しげな
呼び子
「さあさ、こちらへどうぞ!」

風体のいかがわしい男に促され、
第一会場に潜入してみる。
会場と言っても、三畳ほどしかない粗末なものだ。

小林 「むっ! これは」

ベニヤ板が立てられ、
ど下手な筆で梅の木が描かれている。

北小岩 「鼻がたくさん咲いております!」



本来花がある部分に穴が空いており、
鼻が見えているのだ。

怪しげな
呼び子
「ではこの触覚と羽をつけてください」
小林 「蝶々になって、鼻から鼻へ飛ぶんやな」
呼び子 「そうです。
 こよりを持ち、
 鼻の穴に入れてくすぐるのです。
 見事にくしゃみをさせると、
 扉が開いてにっこり微笑んでくれます。
 絶世の美女をはじめ、
 いろいろな方が鼻をつきだしています」
小林 「北小岩、お前が先鋒や」
北小岩 「承知つかまつりました」

北小岩くんは愛敬いっぱいに舞い、
きりっとした鼻筋のところへ飛んでいった。

北小岩 「こちょこちょでございます」
鼻(1) 「くっ、くしゅん」

可愛らしいくしゃみとともに、扉が開いた。

鼻(1) 「こんにちは。チュッ♡」

花よりも美しい女性が顔を出した。

小林 「ええやないか。
 俺はその上をいくで。
 よ〜く見ておけや」

先生もこよりを持ち、
色白で小ぶりの鼻をこちょこちょした。

鼻(2) 「ぐわくしょ〜〜〜ん。
 おう、なんか用か?」

顔を出したのは、
鼻だけが美しい薄汚いおっさんであった。

小林 「おえっ!
 北小岩、口直しや!」

先生はダッシュし、隣の会場に入っていった。
そこは菊の展示会と書かれていた。

小林 「季節がまったく違う気もするが、
 まあええ。
 俺には楚々とした美しさの菊が
 似合っとるんや」

だが、そこもベニヤ板に菊が描かれ、
開いている穴からは、
たくさんのケツの穴が出されているのであった。

小林 「うげえ〜〜〜〜。
 俺の負けや」



一方的に敗北宣言し、会場を全速力で飛び出した先生。
梅園を訪れる皆様は、
このようなインチキイベントには目もくれずに、
正統の梅まつりに参加しましょうね。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2009-03-01-SUN

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