KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百弐拾壱・・・百八

ゴシンチョゴシンチョゴシンチョ。

北小岩 「いくらこすっても、
 あたたかくなりません」
小林 「これじゃあかえって、
 健康に悪いわな」

年始に行なわれる褌羽根つき大会に出るため、
体を鍛えようと早朝庭で乾布摩擦を試みたのだが、
タオルを三回上下させただけで折れた。
三日坊主にすらなれない。

小林 「しゃあない、
 ジョギングに切り換えるか」

家に駆け込み鳥肌をなだめると、
安物のらくだシャツを2枚着込んだ。

小林 「ここでめげたら
 並の男に成り下がってしまうわな」

並みの男より遥かに下なので、
上記の言はまったく筋違いであるが、ともかく家を出た。

北小岩 「血液が隅々まで
 行き渡る気がいたしますね」

血の巡りが悪い弟子が、
白い息を吐き出したその時だった。

「うほ〜〜〜〜ほいほほほ」

町唯一の寺、『切れ寺(きれじ)』の境内から
奇妙な声が漏れてきた。

北小岩 「一大事かもしれません」

二人はなぜか早ギャロップで寺の門をくぐった。

小林 「なんや、あれは!」

阿呆先生が叫んでしまったのも無理はない。
小柄な坊主が撞木を鉄棒のようにして、
逆立ちしながら体を動かし鐘を撞いたのだ。

北小岩 「どうしたことでございましょうか。
 うっ、うわ〜」

弟子の股ぐらから剃髪頭がにょきっと出たと思ったら、
素早く戻り、その際後頭部が玉金をとらえた。

玉金坊主 「大晦日に向けて
 除夜の鐘を打ち鳴らす修行をしているんだ。
 野郎はアクロバッチック除夜の鐘の達人だ」
北小岩 「あの体勢で百八回撞くのでございますか」


股間を押さえながら訊ねた。

玉金坊主 「もちろんだ。
 さらに我が道を行くものもおる。
 あそこをみよ」

そこには薪をくべられていない五右衛門風呂が鎮座。
冷たさに耐えつつ、僧侶が水面に鼻を近づけていた。

玉金坊主 「奴は水に入って屁を百八発かまし、
 己で吸うことにより煩悩を除く」

北小岩 「難儀でございますね。
 わたくしができそうな事は、
 何かあるのでしょうか」
玉金坊主 「そうだな。
 陰毛を百八本抜く。
 乳首を百八回ハサミ虫に挟ませる。
 そうそう、金の玉をミニ撞木で撞く。
 その時はゴーンではなく、
 キーンという音がするんだがな」
小林 「なるほどな。
 ところであんたは何をするんや?」
玉金坊主 「ごっ、ごほん。
 わたしかね」
北小岩 「弟子があれほど厳しい修行を
 されているのですから、
 壮絶なことをなさるのでしょう」
玉金坊主 「いやな。
 わたしは仏像の後ろにこっそり隠れて、
 ぱっつんぱっつんのいい女と
 百八回キスをするんだ」

なんという生臭坊主であろう。
だが、百八の煩悩を除くのは鐘だけでなく、
屁や陰毛、乳首、キスなども同列におかれていることは、
注目に値するだろう。
もういくつ寝ると大晦日である。

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2008-12-28-SUN

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