KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百拾伍・・・ショップ

「もうかりまっか!」

三和土のあたりから、妙にあきんどな声がする。

北小岩 「不穏なものを感じます。
 押し売りでなければ
 よいのでございますが」

不肖の弟子が玄関に急行する。

北小岩 「どなたでございますか」

「先生ちゃん、いる?」

北小岩 「どのようなご用件で」

「やっと成功しました、と伝えてちょ」

軽い男である。
気が重い弟子であったが、仕方なく
トイレの中で昼寝している先生を呼びにいった。

ドンドン

北小岩 「先生! あっ」
小林 「痛いやないかっ!」

強くたたきすぎたために戸が倒れ、後頭部を直撃した。

北小岩 「申し訳ございません」
小林 「なんや。
 人がふんばりながら、
 いい夢見とったのに」

意外に器用な男かもしれない。

北小岩 「来客でございます。
 やっと成功しました、とのことです」
小林 「ふむ、やっこさんか。
 額面どおりには受け取れんな。
 あやつは様々な商売に手を出してきたが、
 ことごとく失敗しておる」
やっこ
さん
「でも今回、
 ついに大成功したんですよ」
小林 「こら、勝手に上がってくるんやない。
 しゃあない、話してみい」
やっこ
さん
「ボロい商売ですよ、これは。
 何せ場所をとらず、人件費は最小単位。
 その上日銭が入ります」
小林 「そんな甘い話あるんかい」
やっこ
さん
「ありますよ。
 名づけて『ポケットショップ』。
 ボン、キュッ、ボンのグラマーレディが、
 100個のポケットがついた
 セクシーウェアを着るんです。
 ポケットは、
 胸、おしり、秘密の部分など、
 色々なところについていて、
 そこにお菓子が入っています。
 客はくじを引き、
 指定されたポケットに手を入れて
 商品をとることができます。
 エッチなお菓子屋さんですね」

小林 「おかし屋やと。
 お前はまだバブル期みたいな発想で
 商売しとるんかい。
 そんな底の浅い似非商いにのるほど、
 今日びの客は甘くないで。
 それに女性に対しても失礼や」
やっこ
さん
「もちろん、男版もあります。
 もっとも男は、
 当たりは一ヶ所しかありませんが。
 とにかく来てくださいよ」

強引に口説かれ、しぶしぶ後をついていくと。

やっこ
さん
「あそこです」
小林 「むっ!」

何だかんだと難癖をつけていた先生であったが、
所詮悲しい生き物。
セクシー女性を見ているうちに、
じょじょに興奮してしてしまい。

小林 「うっ、うう〜。
 まあ、どれほどのものか、
 試してやるか」

女性になけなしの一万円を渡し、くじを引いた。
1回500円なので、20回トライできる。

セクシー
女性
「はい。
 あなたは、ココとココとココと・・・」

やましい心の持ち主に、女神は決して微笑まない。
肩だの足の裏だの、
いまいちのポケットばかりを引き当ててしまった。
世の中には星の数ほどショップがある。
だが、ポケットショップなどは、
消えてなくなった方がいいものの筆頭であろう。
 

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2008-11-16-SUN

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