KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百九拾八・・・ジャック


ジリリリーン、ジリリリーン。

小林先生宅の黒いダイヤル式電話が、静寂を引き裂いた。

北小岩 「もしもし。
 えっ、警察さんでございますか」

先生のHな宝物、
すなわち非合法なブツを嗅ぎ付けられたと勘違いした
弟子の顔が青ざめる。

北小岩 「はっ、そうではないのですか。
 でも、それは一大事です!
 先生!!」

黒電話を持って師の部屋に駆けつける。
コードが30メートル以上あるので、
家中どこでも運べるのだ。
涎を垂らしながら昼寝していた先生の耳に、
受話器を押し当てる。

小林 「ふっ、ふぁわい・・・。
 何っ? ジャック!?」

寝ぼけていた頭が一瞬で背筋を伸ばした。
詳しい状況は分からないが、何かがジャックされ、
犯人たちとの交渉人として先生に白羽の矢が立ったのだ。
しばらくすると警察が手配した車が
クラクションを鳴らした。
先生と弟子が乗り込むと急発進。
果たしてハイジャックなのか。
バスジャックなのか。
現場に急行すると。

警官 「あそこにチンジャック犯たちが
 籠もっています」

数十メートル先にいる男の股間を示した。
どうやらジャックされたのは飛行機やバスではなく、
ある男のチンチンだったのだ。

警官 「犯人は身長が3センチほどの
 『小さい悪い人たち』です。
 鋭利なものを手に
 チンチンを乗っ取りました」

前代未聞のことゆえ、
警察もどうしたらいいのかわからず、
下半身の専門家と目されている先生に
オファーを出したのだ。

小さい悪い
人たち
「それ以上近づくと、
 この男のイチモツは
 亡きものにされると思え」

小林 「まあ、とにかく話そうやないか。
 君たちの要求は何や?
 金か?」
小さい悪い
人たち
「俺たちのことを
 舐めるんじゃない」
チンチンを
乗っ取ら
れた男
「うお〜〜〜!
 交渉人、言葉を謹んで!」

チンチンに鋭利なもので危害を加えられたらしい。

小林 「すまんすまん。
 では、あなた方の要求は?」
小さい悪い
人たち
「俺たちは
 この男の思い出を頂こうと思ってな」
北小岩 「ロマンチックでございますね」
チンチンを
乗っ取ら
れた男
「そんな美しい話じゃない。
 僕はこのルックスだから、
 今まで多くの美しい女性と恋に落ちてきた。
 もちろん体験した人数も回数も
 半端じゃない。
 ひとつひとつの甘く、
 失神するほど気持ちよかった思い出は、
 すべてチンチンが覚えている。
 その記憶をすべて取り上げ、
 自分たちのものにしてしまうと、
 彼らは言ってるんだ」

今まで一度もモテたことのない先生の表情に、
暗雲が垂れ込めた。

小林 「あんた、そんなにモテるんなら、
 記憶なんてそいつらに
 くれてやればええやないか。
 そんでまた気持ちのいい思い出を作れば
 ええだけの話やろ」
チンチンを
乗っ取ら
れた男
「それが若い頃に酷使し過ぎたせいか、
 このところすっかり
 ダメになってしまったんだ。
 だからチンチンのスィートメモリーズを
 取られてしまったら、
 もうこれから先
 思い出なしで
 生きることになってしまうんだ」

小林 「知るか、そんなことは。
 今まで何度も
 いい思いをしてきたんやから、
 それで十分やないか!
 お前のチンチンの思い出なんか、
 滅んでしまえ!!」

先生は頭から黒い蒸気を出し、
どこかに走り去ってしまった。
無責任な行動に見えるが、これは先生のせいではなく、
明らかに警察側の人選ミスであろう。

イチモツを失うか、
イチモツの思い出を失うかを迫られた男は、
イチモツの無事を選択。
思い出はすべて取りあげられてしまった。
今までいい思いをしてきた人は、他人事ではありません。
いつ小さい悪い人たちに
乗っ取られるかわかりませんからねっ!
べ〜だっ!!

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2008-07-20-SUN

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