KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百七拾八・・・啓蟄


北小岩 「はひふへほほほ」

町はずれの井戸端で、弟子が笑いさざめく。
小林先生の町内では、
町人がのんびり話を楽しめるように、
井戸を設置した。
井戸と言っても穴も水もなく、
枠と水汲み桶だけのフェイクなのだが。
まだまだ修行の足りない弟子であるが、
度外れて温和な性格をしているため、
近隣の人々の間でちょっとした人気者なのだ。

近所の
男A
「北小岩さんの先生、
 普段はどんな感じなんですか?」
北小岩 「とっても寒がりで、
 まだ冬ごもり状態です。
 夜は布団を7枚かけて、
 お休みになります」
近所の
男B
「そんなにかけて、
 寝苦しくないんですかねえ」
北小岩 「重過ぎますね。
 この間も布団の重みで首が絞まり、
 夜中に飛び起きていたようです」
近所の
男A
「それはきっと、
 身体ではなく心が寒いのでしょう。
 いっそのこと、
 石布団でもかけたほうが
 効率よいかもしれませんな。
 ところでここ数日、
 大便をするとお尻の穴から
 まるでピッチングマシンで
 繰り出される白球のように、
 見事な球型の便が出て来るんですよ。
 どうしたことでしょう?」
北小岩 「以前先生がおっしゃっておりました。
 冬の間、虫の姿を見ることは
 ほとんどございません。
 それは虫たちが
 人間の穴という穴にこもって、
 厳しい冬を乗り切っているのだと」
近所の
男A
「ということは僕の場合」
北小岩 「もうすぐ啓蟄ですから、
 虫が活動を始めたのでしょう」
近所の
男A
「でもなぜ大便が球のような形を?」
北小岩 「お尻の中で冬を越したフンコロガシが、
 せっせとフンを
 転がしたのではないでしょうか」
近所の
男A
「ぎゃフン!」
近所の
男B
「そういえば私は、
 ここ数日肛門から
 ちょっと不思議な匂いが
 することがあります」
北小岩 「おならのように
 ソフィスティケイトされた
 香りではないでしょう」
近所の
男B
「そうなんです。
 もっと野性味があるといいますか」
北小岩 「チョウの仕業ですね。
 春に向かって、
 チョウチョたちが
 羽ばたきの練習をしているのです」
近所の
男B
「なるほど!
 だから大便になる前の物体が
 扇がれて、
 屁とは一味違う微香が
 漂ってきたのですね」
北小岩 「先生のお話では鼻をほじっていて、
 でっかい鼻くそが出てきたと思って
 よく見るとダンゴ虫であったり、
 停戦していたカブト虫とクワガタ虫が
 お尻の中で再び激戦を繰り広げ、
 肛門が傷つくこともあるそうです。
 知らないうちに
 陰毛がキレイに刈りそろえられていたら、
 ハサミ虫やカミキリ虫が
 いたのかもしれませんね」
近所の
男C
「そうですか。
 うちのケースは少し違って、
 このところ女房のある部分の具合が
 格段によくなっている気がするのですが」
北小岩 「そっ、それは!」
近所の
男C
「それは?」
北小岩 「秘所にこもっていた千匹のミミズたちが、
 蠢き出したのでしょう!」
近所の
男A
とB
「それは果報な!!」

厳しい寒さもだんだんとやわらいで参りました。
みなさまの穴では、
どんな虫たちが春支度を始めているのでしょうか。
ぜひ、観察してみてくださいね。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2008-03-02-SUN

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