KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を
一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百七拾壱・・・スポンサー


小林 「キンキンに冷えよるなぁ」
北小岩 「やはり冬の銭湯に、
 浴衣に下駄は合いませんでしたね」
ひと風呂浴びた後のコーヒー牛乳を
何よりも楽しみにしている先生とその弟子は、
寒風の中、銭湯へ繰り出した。
だが意味のない軽装。
厳しい冷え込みに負けて、
体の芯から冷えきってしまったのだ。
小林 「しゃあない。
 日本酒を一杯ひっかけてくか」
北小岩 「そうですね。
 はふはふ言いながら、
 おでんも味わいたいですね」
二人は町角にある
『居酒屋へそ下三寸』の暖簾をくぐった。
小林 「おやじ、熱燗一本。
 それから、がんもにすじにげそ。
 たまたまも頼むで」
北小岩 「先生、あそこのイケメン4人衆のお話、
 何やら気にかかるのですが」
小林 「けっ!」
先生はイケメンと聞くと、すぐに気色ばむ。
自分がおそまつな面をしているので、
憎悪の対象にしてしまうのだ。
イケ
メンA
「俺もとうとうスポンサーを獲得したんだ」
イケ
メンB
「お前もか。
 実は俺もなんだよ。
 どこに決まった?」
イケ
メンA
「すっぱ干し梅本舗だよ。
 俺の金玉袋、
 普段尋常じゃなく縮んでいて、
 干し梅みたいなんだ。
 だからそこに社名をつけておけば、
 女の子が目にした時に、
 パブロフの犬みたいに
 唾液がとめどなく流れてきて、
 コトの後に
 思わずすっぱ干し梅を食べたくなるって
 寸法さ」
イケ
メンB
「なるほどな。
 スポンサー収入を得た上に、
 女の子の唾液も活用できて、
 まさに一石二鳥だな」
先生は態度を改め、
目を少女のようにキラキラさせながら、
耳を大きくしている。
イケ
メンC
「君はどうなんだ?」
イケ
メンD
「僕は意外なところから
 オファーが来たよ。
 外資系の団体からなんだ」
イケ
メンB
「へえ、たいしたもんだな」
イケ
メンD
「トーテムポール普及協会からさ。
 自分のポールに装飾を施し、
 開チンすることが
 義務づけられているんだ。
 そうすれば、女の子たちも
 部屋にマイトーテムポールが
 欲しくなるだろ」


小林先生の目が、キラキラからギラギラに変わった。
小林 「先ほどから
 君たちのおいしそうな話が
 聞こえてしまっていたのだがね。
 それで、いくらぐらいの契約を
 結んでいるのだね」
イケ
メンA
「金玉袋は年間30万円だよ。
 だけど他にもいろいろ話が来ているから、
 最終的に200万ぐらいになるかな」
イケ
メンC
「僕のトーテムポールは
 手間がかかるので80万だ」
小林 「そっ、そんなにか!
 君たち、そのスポンサーを
 僕にも紹介してくれんかね!!」
イケ
メンA
「あんたじゃ無理だと思うよ。
 だいたい、女の子に
 そんなとこを見せるチャンスは皆無だろ。
 まあどうしてもっていうなら、
 教えてやらないこともないけど」

先生は屈辱に耐え忍びながらも、
しっかりと連絡先を聞き出した。
翌日営業開始とともに電話し、
顔写真、イチモツのサイズなどを記した書類を提出したが、
一時審査ではねられた。
先生にスポンサーがつかないのは当然である。
だが、広告媒体として最後に残された秘境こそが、
パーソナルな体の部分であることは間違いない。
これからスポンサーは、個人の部位に着目し、
投資を弾んでいくことになるであろう。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2008-01-13-SUN

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