小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき
言の葉を一つ一つ採取し、

深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百伍拾四・・・個人情報


小林 「町内名簿を持ってきてくれんか。
 町の先っぽに住んどる
 亀頭はんの電話番号を忘れてしまってな」
弟子の北小岩くんは、
床の間に山積したエロ本の狭間から、
名簿を取り出した。
北小岩 「ええと。
 亀頭さん、亀頭さん‥‥。
 先生、住所のところには
 雁高1丁目と記されており、
 電話番号にいたっては696969と
 適当な数字が羅列されております。
 それにこの名簿、
 虫に食われたように空欄だらけです」
小林 「そうか。
 時代の波は町内にまで打ち寄せとったか。
 個人情報を漏洩させないために、
 非公表にしとるんやな」
ドドン!ドドンドン!

その時、何者かが朽ちかけた玄関の戸を強く叩いた。
小林 「誰かと思えば
 気障持手男(きざもてお)やないか。
 何か用か」
先生は気障くんがモテるというだけで、
つい親の仇のような態度をとってしまう。
気障 「今日は豊富な女性経験を持ち、
 どこへいっても
 モテモテな小林先生に
 お伺いしたいことがありまして」
小林 「殊勝な心がけやな。
 それほどまで言うなら、
 聞かんでもないな」
先生は単純なおだてに豹変する。
気障 「実は個人情報に関することなのですが」
北小岩 「町内でも情報漏れを警戒して、
 名簿ですら
 機能を果たさなくなっております。
 そのようなことでしょうか?」
気障 「もっと深刻です。
 僕はこのように容姿端麗ですから、
 女性からのアプローチが
 引きも切りません。
 しかし、
 女性の一番の個人情報ということで、
 アソコを見せてくれないのです。
 僕は意外と奥手で、
 実は生まれてから
 一度も女性の秘所を見たことがなくて」
小林 「ほほう。ほう」
気障 「事に及ぼうとした時、
 女性はそこに箱を装着してしまいます。
 穴から手が入れられるように
 なっているのですが、
 触った感触だけでは、
 どうにも想像できないのです。
 僕はモテ男としての
 プライドもありますから、
 Hなお店にも行ったことがないし、
 ノーカットのエロ本も裏ビデオも
 見たことがありません。
 そこがどうなっているのか、
 のどからチンポが出るほど知りたくて。
 それさえわかれば余裕ができて、
 これから女性と一線を超え、
 ウハウハしまくれる思うのです。
 先生、ご教示ください!」


先生は弟子と視線を交わすと、
すべてを理解した北小岩くんが深くうなずいた。
北小岩 「わたくしがかわりに説明いたします。
 女性の秘園こそ、まさにこの世の楽園。
 どこまでも透き通る泉。
 色とりどりの花の競演。
 耳を澄ませば小鳥のさえずり。
 奥にはかわいらしい天使が
 住んでおります」
小林 「そうやな。
 四季折々の華麗な眺望。
 夜ともなれば、一番星が瞬くわな」
気障 「ロマンチックですね」
小林 「まあ、オマンチックと言ったほうが
 正解やろな」
気障 「ありがとうございます!
 これで僕が初めて秘所を目にしても、
 取り乱すこともなく、
 天まで昇っていくことができると
 思います」
気障くんは脳の銀幕に憧れの泉を映写し、
嬉々として帰っていった。
北小岩 「説明したモノとは
 かなり異なっているので、
 目の当たりにした瞬間ショックで、
 EDになってしまうかもしれませんね」
小林 「それもいいでぃわないか」
小林
&北小岩
「あはははは」

悪代官のように笑う師匠と弟子。
モテるヤツをつぶすためなら、
聖人の顔をして嘘を並べたてる。

個人情報を守るにも限度がある。
あまり頑なにならずに、
接して漏らさずぐらいの心構えがほどよいのだ。
そうでなければこのような輩が跋扈し、
罪なき童貞たちが次々に能力を奪われてしまう。
日本は今、個人情報堅守により、
さらに少子化の危機にあるといえるであろう。

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2006-12-24-SUN

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