小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百四拾弐・・・スタンダード


「うっ、うわお〜〜〜!」
居間でテレビ観賞していた北小岩くんが、
雄叫びをあげた。
異変を悟った先生が、襖を開けつつ。

小林 「どないした!
 道にケツの穴でも落としてきたんか!!」
北小岩 「いえ。
 今流れたコマーシャルの中で、
 ロボットが体操したり、
 子供と追いかけっこしたり
 していたのです」
小林 「そのことか。
 お前は世事に疎いからな。
 ヒト型ロボットは日進月歩なんやで」
北小岩 「わたくし、
 まだ金属製カマドウマのようなものが、
 ぎ〜こぎ〜こ動いている段階かと
 思っておりました。
 この潮流は、すでに世界的なのですか」
小林 「まだやな。
 この分野、日本が最先端と言われとるが、
 さらに世界でロボットを
 ポピュラーにしていくためには、
 グローバルスタンダードの確立が
 急務やろな」
北小岩 「状況はいかがですか」
小林 「何度もワールド会議が行われとる。
 各国で規格がばらばらやと、
 普及するのに時間がかかるからな。
 だが、中々難しい問題があってな」
二人は翌日、
第69回世界ロボットサミットが開催されている
川崎・堀の内の特殊個室ロボット会館に出向いた。
世界各国から集結したロボット工学の権威が、
白熱した議論を戦わせている。
北小岩 「まさにトップレベルの方々ですね。
 わたくし程度の頭脳で、
 ついていけるかどうか」
小林 「まあ、よく耳の穴おっぴろげて
 聞いてみい」
ロボットの基本的構造については、
世界標準がオーソライズされているようだ。
しかし、議論が平行線をたどっているのは、
ある一部分に関してであった。
A国
代表
「納得できませんな。
 あなた方の国では、
 その程度の対象で
 股間をもっこりさせてしまうのですか。
 そんな局所レベルの低いロボットなんて、
 とてもじゃないけど
 スタンダードにはできませんよ」
B国
代表
「失敬な!
 我が国の如意棒をコケにする気か!!」
ある一部分というのは、ぽこちんであった。
ロボットがどのようなスケベに刺激を受け、
屹立させるのか。
基準をどこに設けるのか。
各国代表は、自分が一番興奮した裏本などを持ち寄って
参考資料にし、
スタンダードを確定しようとしているのだ。
だが、各大陸、国家、民族、地域等により
嗜好がまったく異なるため、
着地点を見出すことができない。

C国
代表
「私の国の男子は、
 乳輪が直径10センチを超えると、
 エイリアンのように見えてしまって
 反応できないのですよ」
D国
代表
「それには賛成です。
 ところでこれは、
 どこの国の本ですか?」
E国
代表
「うちです。
 どうです、なかなかのものでしょう」
D国
代表
「とんでもない。
 何ですか、このラーゲは!
 こんなみだらな格好、
 地球が誕生してから今まで、
 どんな生物もとったことないですよ。
 いくら強い刺激が好みといっても、
 恥を知りなさいな。
 私の大切なロボットのジュニアが、
 変態を基準にされるなんてまっぴらだ」
E国 「そこまで言うのなら
 こっちも言わせてもらいますが、
 あんたの国のエロはお子ちゃま以下だな。
 その程度で角度をつけているなんて、
 あんた早漏でしょ」
D代表 「何だと!
 お前のなんか
 白いツチノコみたいにデカいだけで、
 ふにゃふにゃだろ。
 ロボットもそうなんだろ」
議論は脱線。迷走した。
結局その日の会議でも、
ロボットのいちもつグローバルスタンダードを
決定することはできなかった。
北小岩 「各国代表とも
 依怙地になり過ぎている気がいたします」
小林 「まあ、わからんでもないな。
 引く事のできない一線。
 それが『エレクト・ナショナリズム』
 (勃起的国家主義)なんや」

世界を代表する頭脳の持ち主とはいえ、
所詮日々その部分を
大きくしたり小さくしたりしている悲しき男の集まり。
何に対しロボットの息子に天を衝かせるのか。
議論に終わりはないであろう。

なお会議の途中、
エロが厳しく統制されている国の代表が、
いきなりのノーカットで股間に血がのぼってしまい、
本を手にトイレに駆け込み、
すっきりした顔で戻ってきたことを付け加えておく。

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2006-01-22-SUN

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