小林秀雄のあはれといふこと

しみじみした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百弐拾伍・・・代行業


「何か食いたいもんあるか?
 フグでもカニでも遠慮するな」
どういう風の吹き回しであろうか。
小林先生が弟子に奢る時には、
駄菓子屋で
30円のイカかソースせんべいが関の山なのに。

北小岩 「大金の入ったお財布でも
 拾われたのですか?」
小林 「アホこくな。
 実はな、
 新しいビジネスを開拓したんや。
 まあ、男のプライドを救世する
 代行業といってもええやろな。
 男たるもの老若を問わず、
 またどんな地位にあろうとも、
 かなりエグいエロ本やエロビデオを
 所有しているもんや」
北小岩 「わたくしも蔵書の隙間、
 植木鉢の下、米びつの中など、
 そこかしこに忍ばせております」
小林 「そうやろ。
 だがお前が
 突然死んでしまったらどうなる。
 家族によって
 白日のもとにさらされるやろ。
 つまり男たちは
 巨大なリスクを抱えて
 日々生きとるんやな。
 お前の場合まだ独身だからええ。
 年頃のお嬢さんがいる家庭の
 父親やったらどうなる。
 ソフトなものなら
 愛嬌ですむかもしれんが、
 ノーカットのずっこんずっこんの
 バッコンバッコンの
 びろんびろんやったら
 どないするんや!!」
北小岩 「愛するお父さまとの
 ゆりかごのような思い出が
 崩壊してしまいます」
小林 「そこにビジネスチャンスありや。
 1人1万円ぽっきり。
 そいつが死んでしまった時に、
 家族に気づかれずに
 エロ製品を救出する契約を結んだんや。
 一声かけたら20人ほど集まった。
 俺はこれを事業化し、
 ベンチャービジネスの旗手として
 ウハウハな生活を送ろうと思う」
北小岩 「それほど儲かるのでしょうか?」
小林 「甘いな。
 エロ製品を所持している
 15歳以上の男が、
 日本に5000万人いるとしよう。
 1人1万でいくらになると思う」
北小岩 「あっ、5千億円になります!」
小林 「ちっぽけな日本だけでその額や。
 それを世界展開したらどうなる」
北小岩 「まさしく
 エロジャパニーズ・ドリーム
 であります!」
小林 「しかも金だけやのうて、
 お宝エロ本やビデオが
 ぎょうさん手に入るんやで。
 一攫千金どころやない。
 一攫玉金や!
 ご愛顧に感謝し、不幸があった際は
 そいつのちんちんが
 でかかったと喧伝する
 無料サービスもつけとるんや」
数ヵ月後、ある顧客が亡くなった。
契約を履行すべく、北小岩くんを連れて
葬儀後すぐの故人宅におじゃました。
親類が酒を飲み亡き人を偲んでいる。
師弟で出張ったのは、
故人の所有物が本やビデオのみならず、
ダッチワイフや額入りのマン拓など
数多の大物が存在するからだ。
二人は故人とは
哲学書や教養ビデオを通じての
親友ということにしている。
しばらく歓談した後。
小林 「ちょっと、トイレをお借りします」
席を立つと北小岩くんに目配せした。
顧客から預かった見取り図を開くと、
そこにはエロ宝の置き場所が
克明に記されていた。
小林 「まずは主人の部屋の押入れからやな」
扇風機やアルバムをどかすと、
巨大なダンボールに入った
最高級シリコン製ダッチワイフが顔を出した。
小林 「そっちを持ってくれ。
 これは20キロ近くあるんや」
中から故人の天使を取り出したその時。
親戚 「何してる!
 どうもそわそわしているから
 妙だとは思ったが、
 やっぱりこそ泥か!!」
小林 「誤解や!
 わしらは故人から
 キャンディちゃんの救出を依頼され」
親戚 「何わけわからんこと言ってるんだ。
 すぐに出て行かないと
 警察を呼ぶぞ!!」
小林 「あなたはご存じないかもしれませんが、
 三郎さんのちんちんは
 とてつもなくデカくてですねえ」
親戚 「この野郎!いい加減にしろ!!」


先生と北小岩くんはあまりの迫力に気おされ、
退陣をよぎなくされた。
二人は足がもつれ玄関ですっ飛んだ。
すかさず親戚が塩をまく。

小林先生が長年あたため続けてきた
夢のベンチャービジネス構想。
狙いは悪くないような気もするのだが、
このままでは警察のご厄介になって、
中折れすることは確実であろう。

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2005-03-16-WED

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