小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百八・・・衛星



「あれっ、流れ星です。
 こちらにも、あちらにも‥‥」

夜空にこうべを垂れて微動だにしない北小岩くんを見て、
小林先生がちゃちゃをいれた。

小林 「どないしたんや、涎が垂れとるで。
 どこかに穴つきパンティーでも
 干してあるんかいな」
北小岩 「流れ星をたくさん見たので、
 世界が平和になりますようにと
 お願いしていたのです。
 それにしても不思議です。
 流星群が近づいているというお話は
 聞いていないのですが」
小林 「ははあ、なるほど。
 お前が目にしたのは流れ星やないな」

翌朝、割り切れない表情の北小岩くんは、
先生に連れられ川崎区堀之内にある公共機関を訪ねた。

小林 「こちらが『日本航空宇宙局部』、
 略してJASA(じゃさ)の
 局部長をしておられる
 宙万毛伸夫(ちゅうまんげのびお)氏や」
北小岩 「航空宇宙局ならわかりますが、
 宇宙局部というのはいかがなものですか?」
宙万毛 「宇宙には実に様々な局面があるのです。
 私たちはその中で
 最も重要な局部を扱っております」
北小岩 「そうでしたか。
 実は宇宙のことで
 とても気になることがございます。
 近頃尋常でない数の
 流れ星を見かけるのですが、
 異変が起きているのでしょうか?」
宙万毛 「それは流れ星でなく、人工衛星ですね」
北小岩 「と申しますと?」
宙万毛 「今、世界各国が
 秘密裏に進めているのが
 人工衛星兵器の拡充です。
 宇宙からエッチな電波を他国に送りつけ、
 いかに自国が
 エロのパラダイスかを知らしめ
 主導権を握ろうとしているのです」
小林 「そうや。
 発信された電波は
 男のイチモツをアンテナにして、
 知らず知らずのうちに
 睾丸に記憶させられてしまうんや。
 他国のほうが
 気持ちのええエロがあると分かったら、
 男たちはその国に
 シンパシーを感じ憧憬を抱くやろ。
 そこが狙い目や。
 特に己の手で屹立させた
 さみしげなイチモツが
 つけこまれやすいんや!」
北小岩 「そっ、そうなのですか。
 わたくしこれから自分で慰める時には、
 避雷針をつけて
 電波を土に逃がしたいと思います」
小林 「避雷針では無理やな。
 ところで宙万毛はん、
 どこの国の衛星が多いんやろか?」
宙万毛 「ソ連が崩壊するまでは、
 アメリカとソ連の2大エロ大国が
 ずば抜けていましたね」
北小岩 「アメリカのエロ電波の方が
 ポピュラリティーがありましたか?」
宙万毛 「そこが微妙なのです。
 アメリカのエロは
 スポーツに近い感覚です。
 しかし、エロが抑圧されていた
 共産圏のものは
 異様に濃縮されたエネルギーがあり、
 通な人気を誇っていました」
小林 「まあ、ソ連が崩壊してからは
 混沌としてしまったんやがな。
 近頃ではアジアの台頭が目覚しいで。
 どの国もよそのエロには躍起になっておる。
 エロ観測衛星やエッチスパイ衛星の攻防も
 激しい。
 日本も観測衛星『尺八』を打ち上げ、
 オーロラを観測するふりをして
 海外のオーラルセックスについて
 調べていたりする。
 静止衛星『イレテルサット』で、
 他国のものを
 金属性コンドームで覆ってしまう試みも
 さかんや。
 また、誘惑衛星『ヤマト赤貝』で
 色仕掛けにし、
 合体させて一緒に大気圏に突入させ
 燃やしてしまう妨害行動にも出ておる。
 昨今、流れ星が多いのはそのせいや」
宙万毛 「各国思惑はありますが、
 それぞれの国が
 協力して運営している衛星もあるのです。
 『ウタマロミール』がそうです。
 その電波は宇宙に向けて発信されています。
 地球の男のイチモツは
 平均3000メートルあるとの
 インチキ情報を流し、
 宇宙人の侵略を防いでいるのです」
北小岩 「なるほど。
 いくら宇宙人とはいえ、
 おちんちんが3キロもある方は
 いらっしゃいませんから、
 どんなイチモツ自慢でも
 侵略を諦めますね。
 今までの戦争とは
 形態を変えた目に見えない情報戦争が
 繰り広げられているのですね。
 とてもためになりました」

衛星を利用した各国の覇権争い。
だが、懸念される深刻な問題がある。
それは電磁波による男性局部への悪影響である。
今はエロ電波によるオルグであるが、
それがエスカレートすると列強国は
電波による性器の破壊を企ててくるであろう。
秘密裏に打ち上げられる人工衛星、
これからも目が離せないのである。

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2004-02-15-SUN
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