小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の六拾六・・・・バレンタイン


「こんにちは!」
「おひさしぶり!」
「一年ぶりやな。まあ、上がってくれ」

小林先生は毎年バレンタインデーに、
三人の仲間と会合を持っている。
その名も「男同士でチョコレートを食べる会」。
世の中にこれほど寂寥とした集いはないだろう。
モテないことにかけては
いずれも劣らぬ猛者ぞろいだ。
会のサブメンバーとして、
弟子の北小岩くんも参加している。

小林 「なあ、北小岩。
 ここにいる三人は、
 バレンタインデーのダークサイドを
 知り尽くした侍たちや。
 後学のために、
 よ〜く話を聞いとくこっちゃな」
北小岩 「かしこまりました」
モテない男A 「北小岩さんは、
 暗黒のバレンタインデーのことは
 ご存知ですか」
北小岩 「いえ、存じませんが」
モテない男B 「私たちはそれを、
 ブラックバレンタインと
 呼んでいます。
 ブラックバレンタインも
 バレンタインデーと同じ日なんです」
モテない男C 「でもね、その贈り物は
 2月14日の丑三つ時に
 届くんですよ。
 深夜のうちに、
 今まで付き合っていた男に
 屈辱的なプレゼントを贈って
 清算する。
 そして夜が開けたら、
 新しく惚れた男に
 愛を告白するんです」
北小岩 「初耳です。
 いったいどのようなものが
 送られて来るのですか」
モテない男A 「私の場合は『10秒砂時計』でした。
 『この意味は、
  あんたの粗チンに
  手を当てて考えな!』
 とのメッセージが
 添えられていました。
 早漏を知らしめ
 三行半を突きつけたのですね。
 『10秒砂時計』を引っくり返し、
 あまりの短さに愕然とし、
 3ヶ月間、
 インポになってしまいました。
 その間に彼女は新しい男と
 関係を結んでしまい・・・」
北小岩 「そっ、それは酷すぎます!」
モテない男B 「私は一枚の写真でした。
 私のモノと同じ大きさにつくった
 木彫りのちんちんが写っていました。
 立てた木彫りの横には、
 ハイライトの箱が
 並べてあって・・・」
北小岩 「それは短小の方には致命的です!」
モテない男C 「だけどAさんとBさんは
 女に捨てられたとはいえ、
 まだまだ幸せですよ。
 私なんかほどよい穴の開いた
 コンニャクが送られてきたんです」
北小岩 「コンニャクなら
 OKじゃないですか?」
モテない男C 「それがコンニャクの穴に沿って、
 カミソリの刃が
 セットされていたのです」
北小岩 「なんと!
 もし誤って
 それを使用してしまったら、
 目の中に入れても痛くないムスコが
 ざっくりといかれてしまいます!!
 だいじょぶでしたか?」
モテない男C 「だいじょぶじゃありませんでした」
北小岩 「ふ〜。ぶるぶるぶるぶる。
 ブラックバレンタインの恐ろしさが
 よくわかりました。
 わたくし、
 今年は事なきを得ましたが、
 来年からは恐怖です!」
小林 「まあ、
 バレンタインデーのチョコレートが
 愛の贈り物ならば、
 ブラックバレンタインは
 憎悪の贈り物やな。
 実は俺も
 ブラックバレンタインにな・・・」

小林先生も立ち直れないほど
邪悪なプレゼントをされたらしい。
ブラックバレンタインの贈り物は、
突然コールド宅急便で届く。
別の男に惚れた女は、
惰性で付き合ってきた男に容赦しない。
でも万が一贈られてしまった方も、ご安心ください。
『男同士でチョコレートを食べる会』のメンバーが
ほろ苦いチョコレートを用意して、
傷ついた男たちを待っていますから。

2002-02-14-THU

BACK
戻る