小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の六拾伍・・・・育児休暇


「先生、葉書です」

『拝啓 小林様。
 只今、育児休暇中。
 昇天の日々を過ごしています!
 敬具 森山良太』

「学生時代の友だちからやな。
 はて、ヤツの息子はだいぶ大きくなっているはずや。
 全寮制の学校に入ったと聞いとるが、
 もう一人生まれたんかな。
 まあ、家におるようやし、お祝いに行ってみるか」

小林先生と弟子の北小岩くんは、
牛久沼にある森山家を訪れた。
呼び鈴を鳴らすと、奥さんが笑顔で迎えてくれた。

森山の妻 「あら小林さん。おひさしぶり!」
小林 「どうもこんにちは。
 この度はおめでとうございます。
 男の子ですか、女の子ですか?」
森山の妻 「そのことね。
 実は育児休暇を取ったのは、
 子供を育てるためじゃないの。
 夫が赤ちゃんになって、
 私や私の友だちが
 一年間育ててあげるための休暇なんだ」
小林 「??? 上ってもいいですか?」
森山の妻 「どうぞ」
薄いピンクのベビー服、
口には本物と見まがうおっぱい型おしゃぶり。
座布団の上で寝息をたてる森山から、
微かにミルクの匂いがした。
森山の妻 「そのおしゃぶりは、
 アイドルのおっぱいの型をとってつくった
 オートクチュール。
 好きなタイプを選べるの。
 良太は赤ちゃんになっても欲張りだから、
 Gカップを選んでアゴをはずしちゃった。
 だから、今はAカップよ。
 カルシウム入りで体にもいいの。
 ほら、お父さんもいろいろ大変でしょ。
 リストラされるかもしれないのに、
 子供の学費も住宅ローンもきついし。
 ストレスも大抵じゃないから、
 育児休暇が必要なのよね」
小林 「う〜む、なるほどなあ。
 んっ?
 こっちのおしゃぶりは、
 張り型のような形をしてるようやけど・・・」
森山の妻 「うふ。ばれちゃた。
 実はね、女も赤ちゃんに戻りたい時があるの。
 それは私専用のおしゃぶり」
奥さんが頬を赤らめ拾い上げると、
黒いレザースカートがめくれた。
エロがからむと動体視力がチーター並みになる小林先生は、
一瞬を見逃さない。
小林 「見たか、北小岩。
 奥さんはシルクのおむつをつけとったで。
 おまけに穴つきや!」
北小岩 「穴つきおむつ・・・。
 世の中には、
 とことんまで無意味なものがあるのですね。
 でもわたくし、大変興奮してまいりました」
小林 「奥さん、この大きな箱は何ですか?」
森山の妻 「それは熱帯保育器よ。
 夜、全裸で入るの。
 保育器の中は、南の島の木陰と同じ環境。
 鳥のさえずりが聴こえて、波の音がするの。
 子守唄を歌いながら、
 哺乳瓶にトロピカルカクテルを入れて
 飲ませてあげる。
 そしてヤシの実ホールを
 おちんちんにつけるのよ。
 寝ている間中、ヤシの実が
 一番気持ちのいい振動を送り続けるんだ」
小林 「ということは、
 フィニッシュ寸前の快感が
 朝までえんえんと続くわけや」
ピンポ〜ン!
森山の妻 「あっ、友だちが来たわ。
 彼女、モデルなの。
 3時のおやつは、彼女といっしょに
 良太にいたずらしてあげるのよ」
小林先生は狩をする肉食獣のように、
玄関に走った。
そこには、蜜もしたたるいい女が立っていた。
小林 「くそう。
 良太の野郎、こんなくびれた艶女から
 3時のおやつをもらうんか!!
 北小岩、俺は今日から残りの一生、
 育児休暇をとるからな!!!!!」

小林先生の遠吠えが、廊下に響く。
だが本人がいくらその気でも、
先生を育児してくれる女など、
どこにもいないだろう。
育児休暇が取れる男は、選ばれし者なのだ。

男は虚勢を張って生きている。
芯からタフなわけじゃない。
大きな不安につぶされそうになった男が、
男を取り戻すための時間。
これからの時代、
育児休暇はますます重要になるに違いない。

(注意・育児休暇は、幼児プレイとは若干異なります)

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2002-02-07-THU

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