COOK
ダイニング部に
集合してくださーい!

お正月、旅したんだぁ。
大晦日に突然決めた「紀伊半島へ行こう」って。
なんか、いま『和歌山ラーメン』って流行ってるし、
和歌山県って行ったことないし、
そんな感じで、理由なんてないの。
ただの思いつきです。
でもね、「おいしいもの」見つけたんだよね。

左に山、右には真っ青な海っていう
最高の景色を眺めながらそのあいだをの〜んびり、
各駅止まりの電車で走っていく。
ぽつんぽつんとある民家のお庭には、
たいてい、みかんの木があって
小さいみかんがついてました。
「お〜和歌山県にきたねぇ」
っていう感じにさせてくれましたね。
海だって、電車から見ても浅瀬は底が見えるほど
水が澄んでいて、ほんとにきれい。
白浜での宿泊先で食べた、鯛でしょ、ひらめでしょ、
それに伊勢湾で採れた伊勢えびでしょ、
マズイわけがないのです。
余計なことしないで、
そのままがいちばんおいしいかったりしちゃうのです。
おいしいのはうれしいんだけどさ、
ダイニング部としちゃぁ、
ちょっと切ない気持ちにもなったよ。
だって、これって料理人はいらないってことだもん。

こんなこと考えながら、「新宮」って駅で降りました。
ここは、紀州の終着駅。
そこで見つけたんですよ「おいしいもの」。
『さんまずし』
駅の売店にあったんです。駅弁ですね。
いままで聞いたこともなかった『さんまずし』。
そりゃ、食べてみるでしょ、試すべきでしょ。
ダイニング部では10月末に
「サンマ」は回遊魚で、油がギラギラになって
房総沖に泳いできたいま、
いちばんおいしいってことで
がんがん「サンマ」焼いたじゃない。
なのに、
ここで「サンマ」を名物として駅弁にしてるなんて、
どう考えても不思議でしょ。
でもね、『さんまずし』の箱に書いてあった
ウンチク読んでほほ〜って思いました。
房総沖で網から逃れたサンマ達は、
寒流に乗って紀州沖に泳いでいくわけです。
その長い間に厳しい潮流に揉まれて
余分な脂肪を落としています。
だから身も締まっているんだそうです。
これは塩焼きにするにはいただけないけど、
すしの魚としては申し分のない味を
持つということらしいんですよ。
この「サンマ」をだいだい酢で締めて
すしにしたのが『さんまずし』。

これにおしょう油ちょっと垂らして。
う〜ん、おいしかったんですよ。
だいだい酢で締めているのと、
「サンマ」の上に昆布がのっているから、
まったく臭みがない。
塩焼きで食べる「サンマ」と違って、
あっさりしてるんだけど、
噛めば噛むほど、じわ〜っと味がしみ出てきて、
これがまた、コクがあっていいんですよ。
ほんと、食べてみてよかったですよ。
また食べたいって思ってますもん。
同じ「サンマ」でも、採れる時期や場所によって
違う食材に変わってしまうってことですよね。
でも、その食材に合ったその時々の
おいしい食べ方を見つけられるって
お料理ってやっぱりおもしろいなぁって
改めて実感しました。
それからね、この「さんまずし」、
ひとりで食べ切るにはちょっと量が多くて、
最後のひとつをどうしても食べられなかったんです。
でも、おいしいから残すのももったいない。
っていうんで、しゃりだけを半分落として口にパクッと。
ん? これじゃ、ちょっと「サンマ」の味がキツすぎる。
でね、わかったんですよ。
この「サンマ」ひと切れに対しての、
しゃりの量はこれがいちばんおいしい
ってことを、ちゃんと計算されて
作られているんですよね。
やっぱり、料理人って必要です。
新宮以外にも、熊野、勝浦などの駅でも
「さんまずし」売っているそうです。
機会のある方、ぜひ1度食べてみて下さい。

あとさ、この「さんまずし」の箱の
ウンチクが書かれている部分、
この中に、
「国鉄の駅弁としてもお賞めを受けることになりました」
ってのがある。
「国鉄」?。びっくり、古すぎるでしょ〜。
そろそろ変えてもいいんじゃない?
どうも、昭和24年に書かれたものらしんだよね。
それだけ長い間食べられ続けている
「おいしいもの」ってこと
伝えたいってことなんだろうね、きっと。

1999-01-09-SAT

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