不正解、食べられません!
ヒメチシオタケ食不適

コケ好きの人と一緒に森へ行くと、
歩みが遅いというか、歩む気すらないというか(笑)、
みなさん、本当に熱心にコケを観察するんです。

ルーペを持ってない人は、超初心者か、モグリ。
ちょっと乾燥気味のコケに水分を補う、
水が入ったスプレーも必需品なのだとか。
プシュっと水分を吹きかけられたコケは、
眠りから目覚めるようにみるみる鮮やかに。
おお!

ルーペで見るコケは、まったく別世界のよう。
その造形は美しくて精緻で見飽きることがありません。
さらに、種の同定なんぞもしようと思ったら、
本当に隅々まで観察しなければならないわけで、
そりゃあ、歩みだって止まります。

独断と偏見で断言するならば、
きのこファンの中で、最も歩みが遅いのは、
主に昆虫に寄生する「冬虫夏草」を愛好する、
通称「虫草屋」と呼ばれる方々ではないかと。
小さな小さなきのこを探すために、
森で、匍匐前進してますから(笑)。

まあ、ぼくも、人のことは言えません。
特に「コケコケの森」と呼んでいる、
一面コケに覆われた場所を訪れると、
ず〜っと四つん這いで過ごしています……。

この場所が大好きなのは、愛してやまない、
コウバイタケオウバイタケベニカノアシタケと、
小さくてかわいい3つのきのこのうちのどれかは、
いつ訪れても、まず見ることができること。
いいでしょ、すごいでしょ。

しかし、今回ご紹介するきのこは、
そのいずれでもなく、ヒメチシオタケ(笑)。
コケコケの森の苔むした落枝に、
ひょい、と生えていました。
高さが5cmないくらいの、
これまた小さくてかわいいきのこです。

ヒメチシオタケは、夏から秋にかけて、
各種森林の落葉や落枝から発生します。
傘の直径は0.5〜1.5cmほど。
色は紫赤褐色で、周縁部は色が淡くなっていて、
湿っていると放射状の条線がくっきり見えます。

ひだは疏〜やや疏で、淡い紅色。
縁が赤褐色で彩られているのが特徴です。
柄は傘と同色で細長く、根本に白い毛があります。

チシオタケ、と名がつくとおり、
傷つけると血色の乳液を分泌します。

ヨーロッパでは可食とされることがあるようですが、
あまりに小さく、量も確保できないので、
食べる価値は、まあ、ないでしょう。

それにしても、
きのこを見ているだけでも、
どんどん時間が経過してしまうのに、
コケを見る楽しみを覚えてしまったら、
森から帰ることができなくなっちゃうかも……(笑)。

ですから、コケを見る楽しみは、
もう少し先までとっておくことにします!
と、言いつつ、
もう、すでに、ハマりはじめているのですが……。

このコンテンツでは、
				きのこの食毒に触れてますが、
				実際に食べられるかどうかを判断する場合には、
				必ず専門家にご相談ください。