ケロウジ
食不適
写真と文章/新井文彦

きのこの名前には、タマゴタケとかベニテングタケとか、
「〜タケ」と付いているものがたくさんあります。
漢字表記は、きっとご存知でしょうが「茸」ですね。
音読みが「タケ」、訓読みが「きのこ」……。

違います、違います!
「茸」という漢字の読み方は、
音読みが「ジョウ」「ニュウ」あるいは「ニュ」
訓読みが「きのこ」「たけ」「しげ(る)」
でございます。

広辞苑第五版によるなら、「茸」の意味は、
ふくろづの。鹿の、再生したばかりの角。
「鹿茸(ろくじょう)」

きのこ。「松茸(まつたけ)」
「きのこ」は日本のみの用法、
原義は、柔らかい葉や草が生い茂るさま。

実は、この原稿を書くにあたって、
調べてみるまで知りませんでした(笑)。
音読みが「タケ」、訓読みが「きのこ」
だと、疑いもせずに思い込んでおりました!

さて。
今回ご紹介するケロウジは、
なんか、まったく、きのこらしくない名前ですな。
カタカナで書かれると、まったく意味不明です。
で、漢字で表記しても、これまたさらに意味不明。
「毛老人」って書くんです。

なんだ、そりゃ。
このきのこが「毛が生えた老人」を彷彿させます?
う〜む、意味がわかりません……。

眉毛がボーボーだったり、鼻毛がボーボーだったり、
耳毛がボーボーだったりする方をたまに見かけますが、
(耳毛が太く長くなるのは老化の始まりだとか……)
それを毛老人とは言いませんよね(笑)。

ご存知の方がいらっしゃれば、
ぜひぜひご教示いただきたく存じます。

ケロウジは、夏〜秋に針葉樹の林地から発生。
傘は、経5〜20cmくらいで、淡褐色です。
最初まんじゅう形で、成長すると開いて漏斗形になり、
表面は徐々にささくれ状に裂けて鱗片を帯びます。
傘裏には長さ5〜8mmの灰褐色の針が密生しています。

柄は中実で、長さは3〜4cm。
根本は、外側も肉も青黒くなっています。

肉は苦く、毒はないものの、食用には向きません。
蓼食う虫も好き好き、ということわざがありますが、
なんと、これを好んで食べる人もいるようです……。

ちなみに、ベニテングダケ、タマゴダケなどなど、
「ダケ」と濁って発音される方がいらっしゃいますが、
「ダケ」ではなく「タケ」が正解です。

実は「ダケ」と和名がついているきのこが、
ぼくの知っている限り、三つあります。
キハツダケ、カヤネダケ、そして、ドコモダケ(笑)。
きのこトリビアのネタとしてどうぞお使いください。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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