これは、食毒不明なんです。
ヒメシロウテナタケ食毒不明
写真と文章/新井文彦

ぼくは「きのこ写真家」を名乗っているので、
きのこに詳しいと思われがちなのですが、
生物学的、あるいは、分類学的なきのこの知識は、
ほとんど初心者レベルではないかと思います。
きのこの生態より何より外観が好きなんです!

自分の撮影以外のときに、
きのこファンの友人や知人と一緒に森へ行くと、
みんな、きのこのことが詳しいのなんの……。
ぱっと見ただけで、これは何々の仲間、とか、
すぐに判断できてしまうんですね、これが。

いったい、君たち、プロの研究者じゃないのに、
どこでどれだけきのこを見たり調べたりしたら、
それだけの知識が身につくのさ?

と、ついつい質問したくなるほど。
好きこそものの上手なれ、とはよく言ったものです。
(少しは見習わねば!)

きのこを見てにやにやしながら写真を撮るだけではなく、
もう少しきのこのことを勉強してもいいかなあ、
と、ぼくもたまに思うことがあるのですが、
やはり、最終的には、まあ、今のままでもいいか、
と納得してしまうので、進歩がないのでしょう……。

プロの研究者ではなく、
普段は会社に勤めながら(あるいは学校に通いながら)、
その合間に、独自にきのこの研究をしている方も、
実はけっこういらっしゃるのではないかと。

今回ご紹介するヒメシロウテナタケの命名者、
(実は、まだ、正式な和名ではありません)
青木稔氏もそんな在野のきのこ研究者のひとり。
日本のきのこ分類のバイブルとも言える、
『日本のきのこ図版』をつくりあげた方です。
すごいなあ!

さて、ヒメシロウテナタケは、夏から秋にかけて、
水分が多い朽木、あるいは、コケの間から発生します。
高さ1〜2cmのとても小さなきのこで、
半透明の白い傘は、縁が多少ギザギザしています。
傘裏のヒダは間隔がとてもまばらなので、
簡単に数を数えることができます。
精緻で、半透明で、まるでガラス細工みたい。

漢字で書くと「姫白台茸」。
「台(うてな)」とは、花のガクのことで、
仏様が座る蓮の花のような形をした台も意味します。
まさにそんな形ですな。

裏側からのぞきこんでみると、
向こう側に、森の緑が透けて見えるんです。
つまり、森の色を持っているとも言えるわけで……。
存在感抜群で、ただただ美しいですよねえ!
ぼくの大好きなきのこです。

阿寒の森という最高のフィールドへ足繁く通って、
きのこを探し、きのこをじっくり観察する……。
この楽しみにどっぷり浸かってしまっているので、
まだしばらく次の段階に進めそうもないのですが、
せめてきのこの名前くらいはもう少し覚えたいと、
多少は思っている今日このごろでございます。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
感想をおくる とじる ツイートする