アカウロコタケ
食不適
写真と文章/新井文彦

北海道の阿寒湖周辺は、日本でも指折りの寒さを誇り、
例年、1月下旬から2月上旬にかけては、
最低気温がマイナス25度以下なんて当たり前!
という日々が続きます。

厳冬期の最高気温はマイナス5度!くらいなので、
単に寒いだけじゃなく、1日の気温差が20度も!
考えてみると、恐ろしいっすよね……。
寒さでも、恐ろしさでも、ぶるぶる……。

さらに、さらに、冬の間、北海道の人は、
室温をほぼ25度以上にキープしているので、
室内と室外の気温差は、なんと50度以上!
脱いだり着たりがスムーズにな重ね着で対処します。

しかしまあ、寒さも、中途半端ではなく、
思いっきり寒いと、これが、感動を呼び込みます。
射し込む朝陽が凍りついた空気中の水分を照らしだす、
ダイヤモンドダストの美しいこと!

氷結した湖面から蒸発した水蒸気が寒さで凍り、
それが次々に重なりあって氷上で花のような形になる、
その名も、フロストフラワーの神秘!
風の無い寒い朝は湖面一面が氷のお花畑と化します。

そして、そして、
見渡す限り真っ白な世界になった冬の森で、
突然、真っ赤なきのこと出会う瞬間の奇跡!
ウソです……。
真っ赤っ赤でもごく普通に見ることができる、
アカウロコタケというきのこです。

すみません、今回の写真は、
どこにきのこが写っているのか、
迷った方がいるかもしれませんね。
そう、赤い部分がきのこなんです。

樹皮が真っ白なダケカンバの折れた枝。
上側には光合成が必要な地衣類がびっしり、
下側に我らがアカウロコタケがびっしり、
という感じで、隠花植物好きとしては、
もうヨダレが止まらない宝のような枝です……。

アカウロコタケは、様々な樹種の枯れた幹や枝から、
基本的には、春から秋にかけて発生します。
真冬のこの時期に赤々としているものは少ないかも。

べたっと枯枝に張り付いているわけですが、
(難しいコトバで言うと、背着性といいます)
ペンキを塗ったような均一の物体ではなく、
そこは、きのこの子実体、
例えば、くっつく役目をする背中の部分と、
胞子をつくって放出する表面はまったく別モノです。

一般的なきのことはかけ離れた姿をしたきのこゆえ、
食べられると思った人はきっと少ないと思います。
そう、食べるにはまったく値しません。

でも、真冬に、森の中で見つけると、
これほど美しく感じるきのこもありません。
ぜひ、本物を、できれば雪の季節に、
じっくりご覧いただきたく存じます。

もし、冬に阿寒へいらしたら、
くれぐれも結露にはお気をつけあれ。
寒い屋外から、暖かい車や部屋に入ると、
カメラもスマホも一瞬で水滴だらけに。
ヘタをしたら、壊れます。

極寒の野外から天国のような室内に、
精密機械を持ち込むときの結露対策は、
厚い布にくるんで更にビニールの袋に入れ、
徐々に温度に慣らしていくといいでしょう。
(野外で長時間使わないことが重要)

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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