食毒不明。疑わしきは食せず。
ザラエノヒトヨタケ
食毒不明
写真と文章/新井文彦

初夏から晩秋まで、ほとんど毎日、
阿寒湖周辺の森へ行っているにもかかわらず、
飽きるどころか、日々、感動の連続なんです。

翌日、まったく同じ場所へ、まったく同じ時間に、
まったく同じきのこを見に出かけたとしても、
まったく同じということはありません。
そもそも既に時間が経過しているわけで(笑)。

たった1日違うだけでも、
きのこの形状はけっこう大きく変化してますし、
何より、同じ道を歩いてその場所へ向かっても、
注視しているものが違います。

木の幹の模様、葉っぱの形状、蠢く虫たち、
鳥の声、木々の香り……。

そう、例え毎日、同じ場所に通ったとしても、
前日に訪れたときには気づかなかった、
新しい「何か」が必ず見つかるんです。
そして、森というか、自然の中で、
そういう新しい発見をすることが、
そういう新しい発見をしたと自覚することが、
楽しくて仕方ないわけです。

エライぜ!と、見つけた自分を褒めたくなります。

と、いうことで、ぼくは、森で、
例えスマホを持っていなくても、
(阿寒では電波がつながらない場所も多いです!)
暇をもてあましたり、退屈したりしたことは、
これまでたった一度もありません。

さて、ザラエノヒトヨタケは、
儚い、儚い、ヒトヨタケの仲間です。
夏の暑い盛りに、林地や草地で発生。
きのこ=子実体を形成したあとは、
2〜3日くらいで「消滅」してしまいます。
「ヒトヨ」タケの仲間なのに一夜で消滅しないの?
と、お思いの方は、まあ、まあ……(笑)。

きのこの変化が早くて劇的なので、
毎日通っても、数時間おきに通っても、
きっとわくわくできると思います、はい。

傘は白〜灰色で中心部の色がやや濃く、
繊維状の綿毛で覆われていて、周縁部には条線も。
直径は2〜5cmくらいで釣り鐘型から平らに開き、
黒く液化するとともに反り返っていきます。

柄は白く、名前にも記されているように、
繊維質の鱗片が密集してザラザラしています。
見た目そのままに、すごく華奢なつくりなので、
触るとすぐにポキリと折れてしまいます。

もろいし、繊細だし、それほど量も採れないし、
毒は無いようですけど、食べるには値しません。
見目麗しいきのこなので観察するだけでも、
十分に楽しめること請け合いです。

そうそう、超絶的にかわいい、
幼菌時の姿は、こちらをご覧あれ。

森を歩いていて、次々に新しい発見をする喜び。
あなたにもぜひ味わっていただきたいものです。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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