ツガサルノコシカケ
食不適
写真と文章/新井文彦

青函トンネルで本州とつながっているとはいえ、
北海道は、本州とは独立した島、つまり、
東京の人たちから見れば「海外」ですな(笑)。

本州と北海道を分け隔てる津軽海峡には、
目には見えない大きな壁が立ちはだかっていて、
ここを境に生物相が違っているのだとか。
生物用語的には、これをブラキストン線と言います。

北海道にしか生息していない野生生物、
北海道には生息してない野生生物って、
確かにそこそこいるような感じがします。

哺乳類で言うなら、
ヒグマやナキウサギやエゾリスは、
北海道でしか見ることができませんし、
ツキノワグマやカモシカやモグラは、
北海道では見ることができません。

そうそう、
野生のニホンザルも北海道にはいません。
つまり、阿寒の森では、
サルノコシカケにサルが腰を掛けている姿を、
見ることができないんです。
残念!

さて、この写真のきのこは、
正確には、ツガサルノコシカケと言い、
多くは、針葉樹の立木、枯木から発生します。

幼菌時は真っ白けのまんまる。
雨が降ったわけでもないのに、
びっしりと水滴をつけていることが多いです

それが、成長するにつれ、
半円形は半円形なんですけど、
上下に厚みが増してくる感じになります。
(写真は、3枚重ねになってますが……)

色は、どんどん成長している周縁部が白、
その内側が赤褐色系で、さらに内側の古い部分は、
灰褐色〜黒が環紋状に並んで年輪となっています。

サルノコシカケの仲間の多くが、
きのことしては珍しく多年生なので、
木から養分を得られる限り成長を続けます。
何十年も生きている個体も決して珍しくはなく、
径50cm以上、厚さ20cm以上の大物も。

それだけ大きければ、
サルじゃなくてニンゲンも座れるだろう、
と思っても実践しないでくださいね。
きっと根本から折れちゃいますから。

ツガサルノコシカケは、
食欲、もとい、腐朽力が強いきのこで、
寄生された樹木はやがて褐色のブロック状に。
林業関係者には嫌われ者です。

ですが、
生木を枯らすことは間引きをすることであり、
他の樹木の成長を促進する、また、
樹木の世代交代を促す、などなど、
生態系の中では大きな役割を担っています。

置物のようにカチカチなので、
当然のことながら、食不適。
薬用とする場合も食べるわけではありません。

それにしても、
サルノコシカケに座ったサルの写真、
撮ることができたらすごいだろうなあ……。
本州ならもしかしたら撮れるかもなあ……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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