不正解、食べられます!
ハナビラタケ
食
写真と文章/新井文彦

とても大切なことなので、
何回も何回も繰り返して言ってますが、
きのこに興味を持ち始めたら、
とにかく、万難を排し、万障繰り合わせて、
ぜひ、本物を見てほしいんです。

スーパーマーケットのきのこ売り場とかではなく、
きのこが生えているフィールドで。
できるなら、森で。

図鑑やインターネットできのこを調べることも、
もちろん、とても大切だとは思うのですが、
野外へ出かけて本物のきのこを観察することは、
五感を使って、きのこを「体験」すること。

見て、聞いて、嗅いで、触って、味わうことで、
紙やモニターで表される二次元の世界にはありえない、
正真正銘リアルなきのこを体感することができます。

さらには、きのこだけではなく、
そのきのこが生えている環境も意識すれば、
それまで自分が知らなかった、想像もしなかった、
自然観察、あるいは自然体験ができるはず。

百聞は一見にしかず、ならぬ、
百見は一体験にしかず、です。

さて。
この写真のハナビラタケについての、
ぼくの「体験」をお話しますね。

ハナビラタケは、初夏から秋にかけて、
主にマツの仲間の根本の地面から発生します。
この写真を撮影したのは暑さが一段落した8月の終わり。
(阿寒ではお盆が過ぎたらもう秋なんです)
雌阿寒岳の麓のアカエゾマツの森で見つけました。

そこは大きくて太いアカエゾマツが林立していて、
風で枝がこすれる音やキツツキが木を突っつく音が、
まるでコンサートホールのように、
ものすごく反響するんです。
「わ〜」と叫んでみるとよくわかります。

ハナビラタケは木の根本に生えているので、
樹木と友情厚い菌根菌と思いきや大敵でありまして、
根っこや樹皮の傷から侵入して菌糸を伸ばし、
やがて木を枯らしてしまうんです。

直径は10〜30cmくらい。
厚めの白いビニールでつくった花びら様の小片を、
幾重にも重ねたような形をしています。

手にしてみるとしっとり湿っていてけっこう重く、
軽くゆすると全体的にプルプルと波打つような感じは、
なかなか他のきのこにはないかもしれません。

いかにもきのこ、という香りがするので、
きのこ好きな人には芳香に感じられることでしょう。

そして、ハナビラタケは、食用きのこ。
(各種サプリメントも販売されています)
手触りそのままの、ぷるぷるこりこり感が、
絶妙の歯ごたえ舌触りとなって楽しませてくれます。
クセのないさっぱりとした味なので、
炒め物、汁物、何でもござれ、です。

ちなみに、現段階でのぼくの野望は、
音を楽しめるきのこを見つけること。
きっとどこかに生えているはず……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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