食毒不明。疑わしきは食せず。
オオワライタケ
毒
写真と文章/新井文彦

森の奥にある小さな滝へと続く、
緩やかな登りの幅広い遊歩道が右にカーブする直前に、
大きくて太い枯れたシナノキが立っています。

木の上部と太い枝は、折れていくつかに分割され、
コケや地衣類に覆われた存在感抜群の「倒木」と化し、
青々としたフッキソウの群落の中に散在。
これが、きのこファン垂涎のお宝でありまして、
いろいろなきのこが、生える生える……。

その、遊歩道のすぐ脇の一段低い場所にある、
いつも湿りがちな長さ2mくらいの倒木から、
毎年、毎年、7月の声を聞くと、
大量のオオワライタケが発生するのですが、
遊歩道を通る人が気づくことはほぼありません。

きのこ愛好家としては、
もったいない! と思うと同時に、
ラッキー! とも思えるわけです。
そう、オオワライタケのように、
大きくて立派なきのこが群生しているのを見つけたら、
ついついちょっかいを出したくなりますからねえ。

ひどい人になると、蹴飛ばしたり、踏み潰したり……。
人通りがある場所に生えるきのこは、受難の連続。
同情を菌じえません、もとい、禁じえません。

オオワライタケは、夏から秋にかけて、
主に広葉樹の腐朽が進んだ倒木から発生。
大きなものでは傘の直径が20cm近くにもなります。
橙黄色でやや赤みを帯びた傘には繊維質の鱗片が見られ、
粘性はほとんどありません。

ヒダは傘とほぼ同じ色で、成長するとともに錆色に。
傘より色が淡い柄は上部に淡黄色で硬質のツバがあり、
根本がぷっくりと太くなっています。

ひと口かじってみると思いっきり苦いそうで、
無理して食べる人は少ないとは思いますが、
正真正銘の毒きのこです。

誤食すると、震え、めまい、寒気などの症状が、
多食すると、幻覚、幻聴を伴う興奮状態になるなど、
神経系の中毒症状があらわれるとか。
死ぬほどの致命傷にはならないようですが……。

流水に長時間さらして「解毒」し、
食用にするという話を聞いたことがありますが、
オススメはできません(きっぱり!)。

きのこ愛好者の中には、毒きのこだろうが何だろうが、
いろいろなきのこを食べたことを自慢する人がいますが、
別にいろいろ食べなくてもきのこは楽しめます。
どうです、この、オオワライタケの姿。
思わず見惚れちゃいませんか?

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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