チシオタケ
食不適
写真と文章/新井文彦

きのこに限らず、
動物や植物や粘菌など、野生の生物や、
あるいは自然の美しい風景が好きな人は、
時間をつくって、ぜひ、実物を見に行きましょう。

頭の中で考えるだけではなく、
対象と実際に対峙して五感で感じることが、
きっと深い理解につながるはずです。

『書を捨てよ、町へ出よう』
は、劇作家・寺山修司の代表作。
素敵なタイトルですよねえ。
現代なら、さしずめ、
「インターネットを捨てよ、外へ出よう」
と、言いたいところなのですが、
なんせ、今や、みんなスマホを持っていて、
外へ出てもインターネットと繋がりっぱなし(笑)。

いやいや、つまり、ぼくは、
本やテレビやインターネットなど、
二次元的な情報だけで満足するのではなく、
できることなら、野外へ出かけて、
自然や生物を自分の肌で感じましょう、
と言いたいわけです、はい(笑)。

本を十冊読むより、動画を十本見るより、
1本の本物のきのこを見つけたときの方が、
その十倍も百倍も感動すること間違いなし、です。

さて。
今回ご紹介するチシオタケは、
目で見るのはもちろん、手を使うことで、
より一層理解が深まると思われます。

まず、この動画をご覧あれ。

2010年に糸井重里さんをはじめとする、
ほぼ日きのこチーム一行が阿寒へ遊びに来た時、
森でチシオタケを見つけたシーンです。

傘にナイフで傷をつけると、
「あたたた」「いててて」
と、思わず口にしちゃうような、
血に似た液体が染みだしてくるんですよね。
だから、ついた名前が、チシオタケです。

夏から秋にかけて、
広葉樹の枯れ木や倒木から発生。
傘は直径1〜4cmくらいの大きさ、
薄い赤褐色で放射状の条線があります。
傘の縁のレースで飾りつけたような白いぎざぎざが、
美しく、かつ、とても特徴的です。

傷つけると吹き出す血のような液体が、
どのような味がするのかわかりませんが、
食欲は大幅に減退されますよね。
当然のことながら、食不適です。

それにしても、チシオタケさん、
人に説明するという理由があるとしても、
いつも傘に傷をつけてばかりですみません。
インターネットにアップされているこの動画を、
ささっと見ていただくのがいいのかなあ、と、
自問する毎日でございます。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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