チャコブタケ
食不適
写真と文章/新井文彦

都会のきのこは、きっと、
阿寒湖周辺の森で生きるきのこに比べて、
生きていくのが大変なのではないか、
と、時々思ったりするわけです。

都会には「自然」がけっこうあるように思えますが、
庭園や公園や神社仏閣や街路樹などは、
自然の素材を使って人間がつくりあげたもの。
本来的な「自然」とは多少様相が違います。

で、きのこは、飛び散った胞子が着地し、
条件が合えばもぞもぞ菌糸が伸びていくわけで、
都会だろうが、田舎だろうが、原生林だろうが、
どこでも発生する可能性はあるものの、
都会では、人間が食べるものは至る所にあれど、
きのこの餌になりそうなものは、
なかなか見つからなさそう……。

だって、公園や神社に枯木や倒木が発生したら、
管理者によってすぐさま片付けられちゃいますし、
生きものの死体なんぞあろうものなら、
もう、大騒ぎですからねえ。

ベランダの鉢植えとか、お風呂場の柱とか、
押入れの中に投げ込まれた未洗濯のパンツとか、
思いがけないところできのこを見つけたら、
きのこ、よく頑張ったなあ!
と、ぜひ、お褒めの言葉をかけてあげてください(笑)。

それにしても、
阿寒の森のちょっと太めの落枝に、
びしっと鎮座しているチャコブタケは、
頑張ったなあ!とこちらが声をかけるより、
頑張っているか!と励まされるほどに、
活き活きとして見えるのでした……。

チャコブタケは、直径1〜3cmほどの、
半球形、あるいは、不規則なコブ状のきのこ。
夏でも、冬でも、1年中見ることができます。
はじめは、赤褐色〜茶褐色ですが、
中の黒い胞子が放出されて外観は黒くなります。

触ってみると、カチカチ。
試しに割ってみると、中は炭状で、
根本の中心から外側へと広がる同心円のように、
白と黒のしましま模様があります。

こんなカチカチで炭炭のきのこを、
食べたいと思う方は少ないと思いますが、
当然のことながら、食不適でございます。

ちなみに、チャコブタケは、
クロサイワイタケ目クロサイワイタケ科。
うん、なんか、確かに、幸せそう……(笑)。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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