ツガノマンネンタケ
食不適
写真と文章/新井文彦

阿寒湖でも、年に1度か2度くらい、
30度超えの気温に見舞われることがあります。
内地に比べたら、湿度は基本的に低いし、
都会にみられるヒートアイランド現象とも無縁。
夜は20度を切るくらいまで気温が下がるので、
文句を言っていたら、バチが当たっちゃいます。

でも、でも、
太陽の陽射しがジリジリと肌を焼き、
もわっとした湿気が体にまとわりついてくる、
エアコン無しではちょっと辛い日があるわけです。

そんな時は、どうするか……。

とっておきの場所があるんです。
エアコンが効いたホテルのラウンジよりも、
もっともっと気持ちがいい場所。

ぼくが勝手に「コケコケの森」と呼ぶ、
雄阿寒岳山麓に広がるトドマツの森の、
林床が一面コケに覆われた一角です。

ここの地形は、直径が数メートルもあるような、
ごろごろした大きな石や岩が重なりあっていて、
その上にコケや地衣類が生えて地面のようになり、
コケの上に落ちたマツの種が発芽して成長し、
森を形成しているんです。

そして、その、岩や石の隙間から、
な、なんと、冷気が噴き出しているんです!
日中なら、白いもやが見えるほど。
虫除け対策で上下レインウエアを着ていても、
しゃがむと寒いくらい……。

別世界です。
もう、本当に、たまりません。

しばし、ぼ〜っとしつつ、
ふと、立ち枯れの木を見るともなく見ると、
ん?
ツガノマンネンタケを発見!

まだ若い個体なので、
表面がニスを塗ったようにピカピカ。
鮮やかな赤がとても美しいですよねえ。
ひと月くらい経つと、赤茶けて光沢がなくなり、
虫に食われたりしてボロボロになっちゃいます。

新鮮な個体を切り取って乾燥させると、
「万年」も保存できそうなくらい、
乾いてかちかちになります(色は褪せますが)。
きのこ好きな人にとっては、
お部屋のインテリアにぴったりかも。

半円形の傘の根本にはしっかりした柄がありますが、
マンネンタケほどは長くならないようです。
また「ツガ」のマンネンタケ、という名前の通り、
ツガ、マツなど、針葉樹から発生します。

いかにもきのこっぽい香りがしますが、
いかんせん固くて、とても食用には向きません。
見た目は漢方薬の「霊芝」で有名な、
マンネンタケにそっくりですけど、
薬用になるかどうかはわかりません……。
あしからず。

この「コケコケの森」は涼しくていいのですが、
不用意にカメラを地面に置いてしまうと、
冷気でレンズやファインダーが曇ってしまいます。

暑い時は、防滴仕様のカメラをあえて地面に置き、
キンキンに冷やして肌に当てる快感たるや、もう!

あ、うそです……(笑)。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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