おしい!食べられるんです!
ウズハツ
食
写真と文章/新井文彦

どうです、この、自然の造形美。
惚れ惚れしてしまいます。
きのこ、恐るべし。
うっとり……。

例えば、このきのこが、東京は銀座あたりの、
高級骨董品店のショーウインドウに飾られていたなら、
国宝クラスの焼物と勘違いする人だっているかも!
と、いうのはちょっと大袈裟ですが……(笑)。

ちなみに、国内で焼かれた陶器の国宝指定は2品。
桃山時代に美濃は牟田洞窯で焼かれた、
志野茶碗 卯花墻(しのちゃわん うのはながき)と、
桃山〜江戸時代に活躍した本阿弥光悦作の、
白楽茶碗 不二山(しろらくちゃわん ふじさん)です。

興味がある方は、ぜひ、ぜひ、上記画像を、
おググり遊ばしていただきたいのですが、
これら国宝の茶碗と比較しても、
今回ご紹介する、ウズハツが醸し出す雰囲気、
負けてないでしょう?
ふふふ、どうです。

国宝陶器の色合いとか、歪み具合を見ていると、
作者たちは、身の回りの自然を模倣して、
作品という形にすることで自分に取り込み、
自然の摂理を理解しようとしているのではないか、
などと思ったりするんですよねえ……。
古来から日本人は、芸術や、生活に、
自然を取り込むのがすごく上手ですものね。

とか、何とか、
阿寒の森で、きのこを見つけて、
毎度のことながらアホなこと考えているなあ、
と我にかえったところで、きのこの話を(笑)。

ウズハツは夏の盛りから秋にかけて、
カシワなど、広葉樹の樹下で発生します。

傘の大きさは直径5〜10cmくらい。
湿っているときは、ちょっとねばねばします。
紫っぽいような、黄土色っぽいような地色に、
通常は濃い色の同心円状の環紋=うず=がありますが、
この写真の個体は、環紋がちょっと薄いようです。

傘裏のヒダは、クリーム色。
触ったり傷つけたりすると染み出す白い乳液は、
時間がたつにつれ、どんどん紫色に変色します。
柄は、幼菌時には、けっこうすかすかで、
成長するにつれて硬くなっていくとか。

そして、ウズハツは、食べられます。
(食べるなら、幼菌がオススメ)
ぼそついたり、辛かったりする場合もありますが、
山と溪谷社『増補改訂新版日本のきのこ』には、
「細かく刻んでたっぷりバターで炒めオムレツに入れる」
と、あります。

しかしまあ、自然の森は、
なんと興味深いものであふれていることか!
訪れるたびに、新しい発見があり、感動の連続です。
(イライラや恐怖もけっこうありますが……)


毒きのこ勢揃いの、大見本市。
はっきりと識別できるようになるまでは、
ゆめゆめ食すべからず。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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