食毒不明。疑わしきは食せず。
ヒナノヒガサ
毒
写真と文章/新井文彦

ヒナノヒガサ(雛の日傘)は、
こんなにかわいい名前がついていて、
こんなにかわいい姿をしてますけど、
毒きのこです。

きのこは何のために毒を持っているのでしょう?

と、質問されることがあるのですが、
ぼくは、まったくわかりません(きっぱり)!
菌類研究のプロですら答えるのに窮するとか。

まあ、そうですよね。
きのこが人間の言葉を話せない以上、
直接質問するわけにはいかないので、
研究に研究を重ねて類推するしかないわけで。
人間のためだけではなく、きのこのためにも、
いろいろなことが解明されることを期待します。

さて。
ヒナノヒガサは、夏から秋にかけて、
林内や庭園内のコケの間から発生する小型きのこ。
(群生することも珍しくありません)
高さは大きいもので5cmくらい、
傘の直径が1cmを超えることはまずありません。

鮮やかなオレンジ色〜橙黄色系統の傘は、
とても肉が薄く、周縁に放射状の条線が見られます。
成長して傘が開くと、その中央がやや凹む感じに。

ヒダは、白くて間隔がまばら。
傘の裏側をじっくり観察してみると、
ヒダが柄の下の方に向かって伸びています。
シイタケとか見慣れている他のきのこにくらべて、
けっこう下の部分、傘からはみ出すくらいの場所で、
柄と結合しているのがわかります。
専門用語で言うところの「垂生」ですな。

目を近づけてよく見ると、肉眼でも、傘や柄の表面に、
超微細な毛がびっしり生えているのがわかります。
(実は毛ではなくて細胞の一種なんです!)
こういう時、重宝するのが、10倍くらいのルーペ。
新しい世界が、ばばば〜っと広がります。
きのこはもちろん、コケや、粘菌や、地衣類を見ても、
すごく面白いです。

そして、毒きのこヒナノヒガサの、
主要な毒成分は、シロシビン類と、ゲロネミン類。
学研の図鑑『日本の毒きのこ』によると、
誤食してしまった場合、想定される中毒症状は、
頭痛、悪寒からはじまって、めまい、血圧降下、
幻覚、精神錯乱、暴力などなど、中枢神経系作用。
ひいい……。

とはいえ、ヒナノヒガサが超小型であること、
毒成分の含有量が少ないことなどを考えると、
中毒する可能性はそれほど高くないと思います。
でも、しっかり、注意しましょう。

ヒナノヒガサを見て、
ひとつ、確かなことが言えるとしたら、
食べられようが、食べられまいが、
きのこはかわいいってことですな(笑)。

毒きのこも、人間も、柴犬も、
すべての生物に貴賎なし、です。
(でも、ヘビは苦手!)

ヒナノヒガサは、以前にも登場しています。
こちらもご覧あれ。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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