おしい!食べられるんです!
ヌメリスギタケモドキ
食
写真と文章/新井文彦

晩秋の夕暮れ時。
阿寒湖畔に生えているヤナギのウロに、
ヌメリスギタケモドキの群落を発見!
写真を撮るよりも、何よりも、
この造形にしばし見惚れてしまいました。

どうです、このヤナギの木。
大きく、力強く、大胆にして緊張感ある姿ときたら、
琳派様式絵画の主役としても通用しそうです。
これぞ、自然の、尾形光琳、酒井抱一(笑)。

幹といわず、枝といわず、
地衣類がびっしり覆っているところも、
なんか、琳派が描く梅や桜の木を彷彿させますな。
フキの葉が枯れ、整理された感じの地面。
その向こうは、葦が生い茂る阿寒湖。
これまた、侘び寂びを演出してます。

そして、よくよく見れば、下に伸びる太い枝は、
何かのアクシデントで折れてしまったにもかかわらず、
逆境を跳ね除け、枯れずにすくすくと伸びている!

う〜む、感動ものです……。

まあ、自然の造形を絵画にかこつけて、
感動ばかりしていても仕方ないので、
我々の主役であるところのきのこの話を(笑)。

ヌメリスギタケモドキは、夏から秋にかけて、
各種広葉樹の、立木、倒木から発生。
阿寒湖周辺の森では、特に、
水際を好むヤナギの木に多く見られ、
カヌーで阿寒湖へと漕ぎだすと、
水上からでもよく目に入るきのこです。
(カヌーできのこ観察なんざ、乙ですな)

他の広葉樹ならいざ知らず、
夏から秋にかけてヤナギから生えている、
中〜大型の黄色っぽいきのこを見つけたら、
まずヌメリスギタケモドキで間違いありません。
前回登場したときにも書きましたが、
別名をヤナギタケとも呼ばれています。

傘は黄色〜黄褐色で、直径5〜15cmくらい。
表面に見られる大きな三角形の褐色鱗片が特徴的です。
湿っているときは、名前の通り、ぬめぬめしていて、
それが、乾くと、てかてかになります。
柄は、乾いてざらざら、長さ5〜15cmくらいです。

仲間のヌメリスギタケは、
傘の鱗片がやや小さく、柄にぬめりが。
そこが本家とモドキを見分けるポイントかな。

そこそこ優秀な食菌で、お味は、まあまあ。
ちょっと濃い目の味付けで食べると、
やや鼻につく臭みも気にならないかと。

この写真のシチュエーションを、
大袈裟にも琳派絵画に例えましたが、
実際にこの場所へ行ったら、
目の前でこの光景が拝めるうえに、
凛とした晩秋の冷気が体を包み、
阿寒湖の波打つ音、木々の葉のこすれる音が聞こえ、
フィトンチッドたっぷりの森の香りが、
鼻腔をくすぐるんですよねえ……。

五感で感じる、きのこ観察。
自然は偉大だなあ。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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