食毒不明。疑わしきは食せず。
コガネホウキタケ
毒
写真と文章/新井文彦

「木」という漢字は、象形文字ですね。
大地に根ざし大空へ枝を広げる木を形にしたもの。
その「木」が二つになると「林」、三つで「森」。
「木」の数が増えれば規模が大きくなる、と考えれば、
単純にして明解です。

ところが、
世の中には「原生林」という言葉があります。
おそらく、多くの方がイメージするのは、
林ではなく、森ではないかと思うのですが、
なぜか「林」を使っているんですよねえ……。

ぼくが通常「阿寒の森」と言う場合は、
まさに、この、自然のままの手付かずの森、
という意味での原生林を指しているわけで、
心の中では、「原生”森”」だろ!と叫んでます。

じゃあ、森とは、林とは、なんぞや、
という定義の問題になるのですが、
お決まりの『広辞苑』によれば、
 もり【森・杜】樹木が茂り立つ所
 はやし【林】樹木の群がり生えた所
って、ほとんどおんなじ意味じゃん(笑)!

林業的な意味で言うと、
人の手でつくられたものが「林」、
人の手があまり入ってないのが「森」、
というような説を聞いたことがありますが、
ぼくのイメージはそこからきているのかなあ。

原生林、天然林、人工林、熱帯雨林、雑木林……、
森林をイメージするような言葉を書き出してみると、
実は「なになに森」のような「森」で終わる熟語を、
思い浮かべることができませんでした。
「どうぶつの森」がある、とか言わないように。

ま、「林」よりは「森」の方が、
ぼくはいいイメージを持っている、
ということなので、
目くじらを立てたりはしません(笑)。

本当は「木」と「森」の漢字を使って、
全体は部分を表し部分は全体を表すって、
まさに自然の姿そのものじゃん!
ってなことを言いたかったのですが、
書いているうちに話がそれてしまいました。
いつものことですが……。

さてさて、今回は、お察しの通り、
部分が全体を表し、全体が部分を表す、
そんなフラクタル的きのこをご紹介します。
コガネホウキタケです。

夏の盛り、トドマツの森の林床で見かける、
(あ、場所は森でも、言葉は”林”床だ……)
まるでサンゴのような形をしたきのこ。
先っぽと枝状部分がなんとなく相似で、
枝状部分もきのこ全体となんとなく相似。
なんて素敵な自然の造形!

何十本、何百本もの小さな「木」が、
伸びては分岐、伸びては分岐を繰り返し、集まって、
「森」と言いたくなるようなカタマリをつくっています。

大きなものは、直径20cmはあろうかという球形に。
根本の部分は、太く、白く、どっしりしています。
触ると崩れるようにパラパラと「枝」が落ち、
白い根っこの部分も非常にもろいです。

食用のホウキタケに似ていますが、
明らかに色が違うので判断しやすいでしょう。
ホウキタケの仲間には毒きのこもあるので、
同定はくれぐれも慎重に。

「自然という書物は数という言葉で書かれている」
と言ったのは、かのガリレオ・ガリレイですが、
中学入学後早々に数学を捨てた超文系ニンゲンとしては、
確かに、もう少し数学を勉強しておけば……、
と思いつつ、いまさらジタバタしても無駄なので、
数学じゃ記述できない自然のふるまいを想像したりして、
これからの人生を生きていく所存です、はい。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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