ヒナコガサ
食不適
写真と文章/新井文彦

倒木が好きです!
と、言っても、ほとんどの人には、
理解してもらうことができません……。

だいたい、一般的な人の日常生活において、
倒木なるものを目にするシーンがどれだけあるか。
おそらく、街で倒木を見かけるとしたら、
台風や洪水など自然災害に見舞われた公園とか、
交通事故でなぎ倒された街路樹とか、
そんな、レアで例外的でマイナスな状況ですよね。

しかも、倒木が発生した時点で、
行政などがすぐ対策を整えて早急に除去するはず。
都会では、邪魔者扱いです。

倒木好きとしては、非常に残念ですが、
まあ、生活に支障をきたすのであれば、
仕方ありません……。

で、あれば、とにかく、
万難を排し、万障繰り合わせて、
自然の森にぜひぜひ足をお運びいただき、
(もちろん、オススメは阿寒の森です!)
森の宝と言っても過言ではない倒木を、
心ゆくまで鑑賞していただきたい、
と思うわけであります、はい。

倒木鑑賞?

そう、自然の森で、数年以上放置された倒木は、
コケや地衣類に覆われ、各種きのこがにょきにょき。
規模を縮小して再構築された小さな森そのものであり、
ポップなセンスを駆使したアート作品のようでもあり、
自然と芸術の高度な融合なのです!

そして、きのこなど菌類によって、やがて……。

ちょ、ちょっと待った!自主規制(笑)。
どんどんわけのわからない方向に進みそうなので、
この辺りで、今回の主役に話を移すことにします……。

ええと、写真の倒木は、トドマツです。
数年前、夏の大嵐が過ぎた翌日に阿寒川源流部へ行くと、
まるで嵐の規模が誇示されたかのように、
川沿いの踏跡を遮る形で倒れていました。

以来、頻繁に通っては「鑑賞」しています。

ここの1、2年では、
コケや地衣類の様相は大きく変わりませんが、
きのこや粘菌は、数日違うだけでも顔ぶれが一変。
この日出会えたのが、ヒナコガサというわけです。
(発生時期が長いので、ほぼ常連さん)

ヒナコガサは、晩春から晩秋にかけて、
腐った木材やコケの間から発生する小さなきのこ。
(漢字は、雛の小さい傘、と書きます)
傘は黄土色〜褐色系とけっこう地味な感じです。
直径はだいたい1cm以下でくっきりした条線があり、
中心部は色がやや濃くて尖っています。
柄は傘と同色で下へ行くほど徐々に色が濃くなります。

これだけ特徴をつらつらと書きましたが、
似たようなきのこがあったりするので、
正確な同定には顕微鏡による観察が必要です。
あしからず。

食不適、とありますが、
猛毒中の猛毒きのこ・コレラタケと、
同じ仲間に分類されてますので、要注意。
まあ、食べない方が無難でしょう。

それにしても、倒木は見飽きません。
第一級の芸術作品のようであり、
もちろん自然そのものであるわけです、はい。

そうなると、ついつい思い浮かべるのは、
あの、かつらメーカー(笑)。
「Art」と「Nature」って、
なんて素晴らしいネーミングなのでしょう!

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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