不正解、食べられます!
ハナビラニカワタケ 食
写真と文章/新井文彦

生物を似たもの同士でまとめて体系づける、
分類学なるものが、世の中にはあります。
もともとは「見た目」が重視されてきましたが、
科学の進歩とともに、分子系統学的な、
DNAの塩基配列を比較する分類も行われ、
何かとホットな話題を提供したりしています。

例えば、猛禽類のハヤブサ。
外見などから、タカやコンドルの仲間に近い、
とされてましたが、DNA解析の結果などを基に、
鳥類の分類が大幅に見直された結果(2012年9月)、
何と、インコやスズメの仲間だということに!
(ハヤブサのくりくりおめめは確かにかわいい)

猛禽類と、インコやスズメの仲間とでは、
イメージ的に、かなりの違いがありますよねえ……。
人間の都合なので、ハヤブサくんには無関係ですが。
小惑星探査機「インコ」。
新幹線「スズメ」。
うん、似合わない……(笑)。

で、で、この、
ハナビラニカワタケですが、
薄くて、ひらひら、ぷりぷりしていて、
花びらのような、海藻のような、
全然きのこっぽくない形をしています。
ところが、そんな見た目とは裏腹に、分類的には、
チャワンタケや、テングノメシガイなどが属する、
子嚢(しのう)菌門のきのこではなく、
いかにも、きのこっていう形をしている、
担子菌門のハラタケ類に近い仲間なのです。

大きさは、直径10cm、高さ5cmほど。
通常は、ゼラチン状、ゼリー状ですが、
乾燥するにつれ、どんどん硬くなり、
コリコリの軟骨っぽい感じの手触りに。
膠質(こうしつ)菌類と呼ばれている所以です。
(膠質の「膠」は、にかわのこと)

このきのこを見て、
キクラゲみたい、と思った方は、大正解。
なんせ、キクラゲ類ですから。
(「見た目」や「直感」もすごく大切です!)
そう、ハナビラニカワタケは、
中華料理でお馴染みのキクラゲ同様、
歯ざわりよく、味に癖がなく、良い出汁が出る、
立派な立派な食用きのこなのであります。
乾燥するとどんどん硬くなる、と書きましたが、
水に入れると、なんと、ほぼ元通りになります。

ちなみに、きのこは、その昔、
隠花植物と呼ばれた時代があったように、
植物に近いイメージがあるかもしれませんが、
植物よりも遥かに動物に近い生物です。

まあ、どんな生物だって、世代を遡っていけば、
この地球で最初に生まれた生物に行き着くわけで、
さらには、我々が日常的に目にするすべての生物は、
(もちろん、見ることができない生物も)
宇宙開闢以来138億年かかって到達した、
最先端の生命であるわけです。

なんだかよくわからなくなってきましたが、
とにかく、命とは、すごいものなんですよねえ……。

あ、そうそう、この写真で、
ハナビラニカワタケを覆うように、
群生して写真に写っている、この植物。
ご存知の方も多いかと思いますが、そう、
泣く子も黙る、トリカブトでございます、はい。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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