正解、食べられます!
カワリハツ 食
写真と文章/新井文彦

この世の中にあるものはすべて、
常に変化していると言っても過言ではありません。

生物の細胞は、日々壊れ、新生されることで、
秩序を破戒して無秩序=乱雑さをもたらしている、
大宇宙をも支配するエントロピー増大の法則から、
見事に逃れて命を長らえているわけです。

60兆個!もあるという人間の細胞は、
数年でみんな入れ替わると言われてます。
でも、たとえ細胞がすべて入れ替わっても、
ぼくはぼくで、あなたはあなた……。
でも、でも、ぼくも、あなたも、
1年前と今日で比べたら、想像以上に、
心も身体も変化しているでしょうね。

それにしても、細胞がすべて入れ替わっても、
ぼくがぼくで、あなたがあなたでいるって、
すんごく、不思議なことですよね!
科学の問題?それとも哲学の問題?
いずれにせよ、そんなことをつらつら考え始めると、
まったく収拾がつかなくなって困ります(笑)。

さて。
写真に写っているのは、
カワリハツ、というきのこです。
「変わり」なんて名前がついているくらい、
傘の色が、ほんと、色々なんです(笑)。
赤、ピンク、紫、青、緑、オリーブ色……。
それらが、さらに、色々、入り交じって……。
もう、訳が分からないくらい、変化に富んでます。
傘は湿っているときに粘性を持ち、
成長するとともにだんだん漏斗型になります。

歯ざわり、舌ざわりがよく、
コクも旨味もあるなかなかおいしいきのこですが、
とにかく、傘色の変化が大きいので、
他のハツ系、ベニタケ系のきのことの区別が、
けっこう難しいんです、はい。
そういう意味で、きのこの同定に自信が無い人には、
食べることをオススメしかねます。

それはそうと。
この写真を撮ったこの場所は、何を隠そう、
ぼくはもちろん、ほぼ日きのこチームも超お気に入り!
阿寒の森の雰囲気をもっと味わいたい人は、
どうぞ、こちらをご覧あれ。

この世に生まれてから、ずっと、ずっと、
ぼくはぼくで、あなたはあなたで、
阿寒の森は阿寒の森で、カワリハツはカワリハツ。
しか〜し。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」
と、鴨長明が『方丈記』の冒頭に記したように、
ぱっと見た感じはおんなじように見えても、
実は、み〜んな、河の流れのように、
瞬間瞬間で、常に変化しているわけです。

そう考えると、ぼくや、あなたや、きのこは、
細胞同士が超複雑に相互作用するシステムであり、
河の水ではなく、河の流れなんですねえ……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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