食毒不明。疑わしきは食せず。
ドクツルタケ 猛毒
写真と文章/新井文彦

きのこを撮るために重い機材を持って森へ行ったのに、
のほほんとして何もしないことがけっこうあります。
これも、それも、あれも、と何かに追われることなく、
のんびりする時間って、実は貴重なんですよねえ……。
話のネタになるような、劇的な出来事はなくても、
100回森へ行けば、100回の新しい発見があります。
回数の多い少ないは、あまり関係ありませんが。
目的は後から付加されるものなのかもしれません。

ぼくは、ことあるごとに、
きのこを見る、見ない、関係なしに、
いろいろな人を森の散策へ誘っています。
とはいえ、阿寒の森へ一歩足を踏み出せば、
きのこを見ないで済ますのはほぼ不可能ですが……。
何を見て(見なくて)、何を感じる(感じない)のかは、
すべて、その人まかせ……。
「何もない」森が「たくさんある」森になったときの、
ポールシフト的驚天動地的感動ときたら、もう。
皆さん、ぜひ、機会をつくって、森へ行きましょう!

さて。
吹く風に少しだけ秋の気配が感じられる頃、
やや薄暗く鬱蒼とした針葉樹の森の底に、
妖しげという形容がぴったりの白くて大型のきのこ発見!
毒きのこマニアの皆さま、お待たせしました。
満を持して、ドクツルタケの登場でございます。

それにしても、美しいきのこです。
穢れを知らないような純白の傘。
シルクのスカーフをまとったかのようなツバを持ち、
鱗片が描き出す模様がこれまた美しい柄。
大きなきのこなので、目立つんですね、これが。
幼菌の可愛らしさも、別格です。

英語では、ドクツルタケのことを、
Destroying Angel(=死の天使)と言います。
その名に恥じず、日本一、二を争う程の、
猛毒を持っているんです。

食べてから6時間〜1日くらいして、
急にコレラのような激しい腹痛、嘔吐、下痢が!
そして、それが、1日ほどで回復傾向に。
しかし、実際には、内臓破壊が進行していて、
1本以上食べた場合、病院で適当な処置をしない限り、
その後1〜3日以内に死んでしまうのだとか……。
本当に、洒落にならん!

毒きのこって、おいしいものが多いんでしょうね。
だって、まずかったら、ひと口食べたところで、
ぺっ、ぺっ、と吐き出しちゃいますよね。
まずくはないから、どんどん食べちゃって、
結果的に毒にあたってしまうわけで……。

純白の天使の誘惑は、天国へと通じています!
何度も言いますけど、皆さん、知らないきのこは、
くれぐれも食べないようにしましょうね。

ドクツルタケについては、昔、文章を書きました。
こちらもご参考に

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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