食毒不明。疑わしきは食せず。
ブナノモリツエタケ 食毒不明
写真と文章/新井文彦

この写真を見て、
お、なんか、阿寒の森と雰囲気が違うような?
と感じた方がいたら、素晴らしい!
撮影場所は青森県八甲田山麓に広がるブナの森です。
針葉樹が主体の阿寒の森に比べると明るいですよね。

実は、この、ツエタケの仲間の分類が、
やや迷走している感がありまして、
というか、ツエタケに限らず、きのこ全般の分類が、
いま、分岐点を迎えているんです。

1990年代中頃までは、主に目視により、
子実体の形態的な特徴を基にしていた分類は、
科学の進歩のおかげで、1990年代後半に入ると、
DNAの情報を活用するようになりました。
形態的特徴に変わる新しい分類体系の始まりですな。

ただ、我々、最末端?のきのこファンは、
あまり深く新分類を意識しなくてもよいかと。
見た目重視で、ほぼ問題なしです。
一般的な人が日常生活を送るうえでは、
「ポアンカレ予想」を応用することよりも、
加減乗除の方がはるかに有用だというのと同じこと。
ん、例えがよくわかりませんね……(笑)。

ちなみに、数学の「ポアンカレ予想」とか、
それを解明した、グリゴリー・ペレルマン、
という名前を聞いて、
ぱっと、きのこを思い浮かべる人は、
相当なきのこマニアですな……(笑)。
(???という人はググってみてください!)

ま、それはそうと、ツエタケの話を。
傘には、放射状のシワや網目模様があります。
下に向かってやや太くなっている長い柄は、
土の中に埋もれた木から養分を得るために、
地中深く、ずずずい〜っと伸びていて、
地上部と同じくらいの長さになることもあります。

実は、今までツエタケとされていたものは、
新しい分類によると数種類に分けられるという説も!
おまけに、ノーマルな、真の、いわゆるツエタケは、
日本に存在してないという可能性も……(笑)。
それもまた、よし、です。

最後に。
今回のきのこは、ブナの森に生えていたことで、
最新の図鑑を参照して、ブナノモリツエタケ、
と名前を同定したのですが、
いま現在、新しい分類を知る手立てがないので、
もしかしたら、別のツエタケの可能性もあります。
実は、旧来的なツエタケ、そして、
新しい分類にも登場するブナノモリツエタケ、
両菌ともに、食べることができるんです!
しかし、そういう事情があるものですから、
一応、食毒不明、としておきます。
あしからず。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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