これは、食毒不明なんです。
ツルタケ 毒
写真と文章/新井文彦

ツルタケの「ツル」は、お察しの通り「鶴」です。
すっきりすらりとした柄の美しいこと……。
タンチョウの雌雄ペアが天を仰いで鳴き交わす時の、
すっくと伸びた首の形そのままではありませんか!
見た目も、すごく羽毛っぽいんですよ、これが。

鶴は千年亀は万年、ということわざがありますが、
実際に、鶴が千年生きられるわけではなく、
寿命が長く、おめでたいことの例えですね。
(例えば、タンチョウの寿命は約30年です)

あ、そうそう、寿命と言えば、
生物学者の本川達雄氏の著作に興味深い話が。
ネズミの寿命は2〜3年、ゾウは約70年と、
年数的には、それこそ圧倒的な差がありますが、
一生に心臓が打つ回数は、ネズミもゾウも、
というか、鳥類、哺乳類、ひっくるめて、
約15億回で同じなのだそうです!

 命あるものを見るに、
 人ばかり久しきはなし。
 かげろふの夕を待ち、
 夏の蝉の春秋を知らぬもあるぞかし。

兼好法師は『徒然草』で、
「命があるものを見ると、人間ほどの長生きはいない」
なんて言ってますが、現代は、まさにそのとおり。
心臓鼓動15億回寿命説?で言うなら、
我々人間の、つまり、哺乳類的な寿命は、
なんと、なんと、41歳なのですから!
生物学的な寿命を科学の力で引き伸ばして、
今の長寿があるということでしょうかねえ……。

ちなみに、覚えていますか?
古文で習った連用中止法を……。
引用した文中の、否定の「ぬ」は、
「待ち」と「知ら」両方にかかります!

あ、またまた話が脱線してるぞ(笑)。

ええと、ツルタケです、ツルタケ。
夏から秋にかけて、マツなどの針葉樹や、
ブナ、ミズナラなどの広葉樹が生えていれば、
街の公園から、亜寒帯の山や森まで、
いろいろな場所で見かけるチャンスがあります。

傘の縁に明瞭な条線があり、
柄は白っぽく、時に鱗片状になっていて、
基部に卵の殻のようなツボがある一方、
マントのようなツバはなし。
いかにもテングタケ科という外観ですな。

生食すると毒である、という共通認識はあるものの、
食べられる、食べられない、両説が入り乱れてます。
毒きのこの見本市のようなテングタケ科のきのこは、
似たようなものも少なくないので、
自信を持って完全に判別できない限り、
食べるのはよしておきましょう。

引用した『徒然草(第7段)』は、そのあとに、

住みはてぬ世に、
醜きすがたを待ちえて、何かはせむ。
命長ければ恥おほし。
長くとも四十に足らぬほどにて死なむこそ、
目安かるべけれ。

という記述も見られるのですが、
何というか、いろいろ考えさせられますねえ……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
感想をおくる とじる ツイートする