ツガサルノコシカケ 食不適
写真と文章/新井文彦

インターネットや携帯電話の普及で、
遠く離れた場所で暮らしている家族や恋人や友人とも、
「つながっている」と実感できるようになりました。
まあ、そんな便利なツールに頼らずとも、
人間の心は、その気になれば、ほんの一瞬で、
愛しいあの人とつながることができるはずですが……。

人間に限らず、地球上の、ありとあらゆるものは、
直接的、間接的に、関わり合っています。
生態系と言われるシステムがまさにそれ。
あらゆる生物は、生きている時はもちろん、死んだあとも、
複雑なサイクルに組み込まれているわけです。

そんな生物同士の「つながり」は、
食物連鎖に象徴されていますよねえ。
食べるのは良いけど、食べられるのは嫌、
と言ってみても始まりません(笑)。

あんまり深く理解しているわけでもないのに、
話が難しい方向へ進みつつあるので(笑)、
このあたりで、今回の主役にご登場願います。
ツガサルノコシカケ、です。

写真のどこにきのこが生えているのか、
わからない、という方、まさかいませんよね?
(写真のいちばん下、倒木から生えてます……)
シイタケやマイタケなど「メジャー」なきのこに並び、
サルノコシカケの仲間も認識率が高いと思われます。

サルノコシカケの仲間には、
年々成長して大きくなっていく多年生のものがあり、
このツガサルノコシカケも、まさにそう。
1年365日、いつでも観察が可能です(笑)。
直径50cm、厚さ20cmを超えるビッグサイズも、
珍しいわけでは決してなく、そうなると、
まさに、その名の通り、お猿さんが座れるサイズ!
風通しも日当たりも悪い多湿な場所を好むようです。

幼菌時は、真っ白で、まんまる。
成長するに従い、赤や黒などの色をまとって、
だんだん、あの独特の半円形になっていきます。
雨が降っているわけでもないのに、
水滴を付けていることが多いのも、特徴のひとつ。

何でもこの水滴は、ツガサルノコシカケが、
木材中の水分を調整して最適な繁殖条件を整える際、
過剰な水分を排出しているのだとか。
何としたたかな。

ぼくと一緒に森へ行った人の多くは、そそのかされて、
この水滴を、ぺろっとなめさせられてますよね(笑)。
ほんのり甘いような、酸っぱいような、
最後にほんのちょっとツンとくるような、
独特で不思議な味がします。

きのこの味、というより、
きのこが寄生した木の味、あるいは、
木が土壌から吸い上げた森の味なのかもしれません。

ああ、やっぱり、みんな、つながっている……。

サルノコシカケ系のきのこは、
民間伝承薬として活用されることもあるようです。
ただ、その効き目は、はっきり言ってわかりません。
だって、はっきりとした効能が確認されるなら、
それは薬として認証されているはずですよね。
薬としての過度な期待は禁物です。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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