これは、食毒不明なんです。
コガネテングタケ 毒
写真と文章/新井文彦

さあ、阿寒の森で、きのこを探しましょう……。
おっと、傘の直径が10cm近い、立派なきのこ発見!

きのこを好きになる前のぼくだったら、
もしかしたら毒きのこかも、と思ったところで、
そのきのこを蹴っ飛ばしているかもしれません。
あるいは、食べられないと仮定した時点から、
全然興味を示さなくなるとか……。

でも「きのこ好き」以降のぼくは違います!
(いつ好きになったのか定かではないのですが)
きのこが嫌がるくらい、しつこくからみます。
まず、その場で座り込んで、じ〜っと、きのこを凝視。

典型的な、いかにもきのこ、という形。
開いて反り返りつつある黄色い傘、裏はヒダ状。
付着する、アーモンドスライスのようなイボ。
柄も、ツバも、薄黄色。
写真には写っていませんが、
根本はぷっくりと膨らんでいます。

触ると、柄はしっかりしていて弾力があります。
特徴的な匂いはなし。
湿ったような、いかにも、きのこ的な、
食べられそうな気がしないでもない、かすかな香り。

テングタケの仲間、と見当をつけます。
おそらく、十中八九、毒きのこ。

そこまで観察して、ようやく、
写真を撮影する準備をはじめるわけです……。
あ、まだ、傘を触ってなかった!
ん?雨のせいで、ちょっとしっとり。

で、写真を撮りながらも、
いろいろ、あれこれ、思いを巡らせます。
いま見えている子実体(いわゆるきのこ部分)は、
きのこ全体の中で、ほんの一部でしかない。
地中に張り巡らされているだろう、
糸状の「本体」はどうなってるの?
きのこと、木の関わりは?
きのこと、土壌の関わりは?
あるいは、きのこと、森の関わりは?

アタマの中が???でいっぱいになりますが、
それが、また、なかなか面白いんですな。

そして、ふと、大切な事に気づきます。
今まで、きのこと、自分(人間)を、
まったく別のものとして認識していたけど、
実は、森というか、まあるい地球の上では、
地球の生物という、同等、対等な関係なんだと。
だって、きのこも、人間も、地球上のあらゆるものも、
組み合わせこと多少違えど、素材をたどれば、
おんなじ宇宙産ですものねえ……。

そんな感じで、きのこを見つけるたびに、
いろいろな思いを巡らせる癖がついてしまったので、
森を歩いて、写真を撮るのに、
時間がかかること、かかること(涙)。

で、まあ、森で出合ったきのこたちの、
さまざまな特徴を覚えておいて、
家に戻ってから図鑑で調べたりするわけです。
が、数種類の図鑑にあたっても載っていない、
あるいは、名前を絞り込めない、
というきのこも、相当たくさんあるんです。

こんなに大好きなのに、
あなたは名前すら教えてくれないのね……。

まあ、そんな一筋縄ではいかないところが、
また、きのこの魅力のひとつなんですよねえ。

もろもろの特徴から、今回のきのこは、
コガネテングタケで間違いなし。
正確な毒成分はよくわかってないけど、
もちろん、毒きのこです。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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