不正解、食べられます!
キツネタケ 食
写真と文章/新井文彦

イタチタケ、ムジナタケ、ムササビタケ……。
動物の名前をつけられたきのこがいくつかあります。
それらのきのこを観察し、名前の由来を推察する、
というのも、また、面白いもの。

では、この、キツネタケは、
何故「キツネ」の名前が付けられたのでしょう?

キツネタケは、夏から晩秋にかけての長い期間、
原生林、雑木林、公園、庭、などなど、
いたるところで発生します。

典型的な、いかにもきのこ、という形をしていて、
いつでも、どこにでも生えているので、
「きのこの雑草」などと呼ぶヤカラもあるそうで。
大きなお世話ですよね。
ふん。

キツネタケは、
色や姿形が、実に、多彩です。
あるときは、乙女のごとく、
サーモンピンク色で、傘、開き切らず。
あるときは、熟女のごとく、
ドドメ色、もとい、あずき色で、傘、水平に開く。
あるときは、老女のごとく、
茶褐色、灰褐色で、傘、漏斗のように反り返る。

女性に例えたのは、他意はありません。
でも、ええと、まあ、きのこを男性に例えると、
あの、その、いわゆる、18禁ってやつになりかねず、
その手のハナシになってしまうと、
暴走が止められなくなってしまう恐れが……(笑)。

ええと、それで、
だんだん色が落ちていったり、
傘がつぼまった形から逆さに反り返っていくのが、
成長の過程であれば、当たり前の変化ですけど、
キツネタケの場合は、若い、古い、関係なし。
水分のあるなしとかでも、色や形を変えるんです。

ですから、
傘が開いてない赤茶色の個体もあるし、
傘が反り返っているピンク色の個体もあります。
前日まで灰色がかっていたのに、
雨が降ったら赤茶色が復活していた、
なんてこともよくあります。

英語圏では、キツネタケのことを「deceiver」、
欺くもの、などと呼んでいるそうです。

名前の由来が浮かんできましたか(笑)?

傘の色や形が、変幻自在。
ってことは、人を妖かし化かす。
人を化かすのは、キツネ、と相場は決まっている。
はい、命名、キツネタケ、一丁上がり。
(短絡的思考で申し訳ありません)

何しろ、色や形が多種多様なので、
食べるときには、十分ご注意を。
おいしい、おいしくない、両説がありますので、
味には地域差があるのかもしれません。

あと、キツネタケには、
アンモニアを好む性質があるらしく、
思い返せば、この写真を撮影した倒木に、
エゾリスがいるのを何度か見たことがありました。
そうか、そういうことか……。

ちなみに、真偽が疑わしい、という意味の、
「眉唾」という言葉がありますが、これは、
キツネに化かされるのは眉毛の数を読まれるからで、
眉毛にツバを塗って数をわからなくすれば大丈夫、
という俗信が語源なのだとか。

この「きのこの話」の内容も、実に眉唾もの。
なのに、いつもいつも、お付き合いいただき、
誠にありがとうございます。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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