コウバイタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

小さいけど、存在感抜群。
清楚、可憐、優美、端麗、華奢、などなど、
思いつくままに賞賛の言葉を並べたくなるくらい、
大好きなきのこです。

その名も、コウバイタケ。
紅梅、というか、イチゴとミルクを彷彿させるような、
紅、あるいは、ピンク色と、白とのグラデーションが、
もう、たまりません。

大きい個体でも、傘の直径は、1cmないくらい。
高さも、せいぜい、5cmくらい。
透き通るような美しい柄は、すごくもろく、
よく観察するために、コケを避けようとして、
少し触れただけでも、ポキっと折れてしまうほどです。

これほど小さければ、もし、食べられるにしても、
食用とするには無理がありますね。

ぼくは、阿寒湖周辺の森を、大きく5つに区分して、
初夏から晩秋まで、ほぼ毎日、1カ所か2カ所を、
ローテーションを組んで回っているのですが、
この、コウバイタケが見られるのは、
ぼくが知っている範囲、ということですけど、
広大な森のほんの一画、100mほどの範囲限定です。
とはいえ、それほど珍しいきのこではありません。

コウバイタケは、7月始めから10月くらいまで、
けっこう長い期間にわたって見ることができます。
ただし、視認できるくらいに成長してくると、
3〜4日くらいでしおれてしまうので、
確実に「旬」に出合うためには、
同じ場所に、数回は通う必要があります。

コウバイタケは、小さいし、
主に林床から発生するので、
写真を撮影するのは、なかなか大変です。
ぼくは、数年前から、いわゆるプロ用の、
漬物石の代わりにでもなりそうな、
大きなカメラを使わなくなったのですが、
それは、こういう小さいきのこが撮りづらいから。

ボディーが大きいので、
三脚から外して、地面に直接置いても、
きのこを「上から目線」でしか撮れないんです。
では、どうやって、撮影していたか?
穴を掘って入れてました(笑)!

まあ、今使っているカメラも、
コンパクトカメラに比べれば十分大きいのですが……。

最近のカメラには、ライブビューと言って、
ファインダーを覗かなくてもカメラ背面の液晶画面で、
構図やピントが確認できる機能があるので、
撮影は、ひと昔前に比べれば、断然、楽になりました。

とはいえ、相手は小さなきのこ。
地面に腹ばいになったり、頬をこすりつけたりするので、
汚れとは無縁ではいられません。

すごく運が良ければ、
コウバイタケと、同時期、同じ場所で、
しかも、同じ大きさ、同じ形をしている、
黄色い、オウバイタケ、ベニカノアシタケとの、
絶妙コラボレーションが見られます。
虫刺されもなんのその、ほんと、うっとりです。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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