ツヅレタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

ちっちゃな子ども時代がかわいいのは、
何も動物だけに限ったことではありません!
どうです、幼菌ツヅレタケの、この容姿。
キュートでしょ?
ラブリーでしょ?
インクレディブルでしょ!

タマゴタケにしても、
ベニテングタケにしても、
幼菌時の愛らしさは、格別ですからねえ。
うっとり……。

ええと、うっとりしている場合じゃない。
さて、このツヅレタケ。
「ツヅレ」は、漢字で書くと「襤褸」。
すんごく難しい字ですけど、これは、
破れた部分をつぎ合わせた衣服、
つまり、ぼろの着物という意味です。

それもそのはず、ツヅレタケは、
成長して大きくなると、傘のふちに、
被膜の名残がひらひらとぶら下がってたりするんです。
それを、わざわざ、ぼろに見立てて、さらに、
名前にしちゃうこともないと思うんですけどねえ……。

成菌はそんな感じで、見てくれが悪いので、
あまり食べようという気にはならないと思いますが、
幼菌の容姿はおいしそうに見えないこともありません。
食べることに関しては、酸いも甘いも噛み分けた、
さまざまな「チャレンジャー」がいらっしゃいます。
念のために、もう一度、申し添えておくならば、
この、ツヅレタケは、食不適、です。

でも、食不適、ということは、
おそらく毒成分は含まれてないってことで、
だとしたら、どんな味がするのか、
ちょっとだけ試してみたいような……(笑)。

何はともあれ、こんなにかわいいきのこが、
しかも、ペアで生えているのを見つけたら、
たとえきのこが好きな人じゃなくても、
のほほんとした気分になれること間違いなし、です。

じっくりと腰を落ち着け、
目の前にあるきのこをじ〜っと凝視し、
ニンゲンに与えられた大きな力、
想像力を駆使して、いろいろな妄想にふけるのも、
なかなか乙な、森の時間の過ごし方ではないかと。
(吸血昆虫の攻撃が待ってますけど……)

ちなみに、きのことは関係ありませんが、
シンガーソングライター、キャロル・キングが、
1971年に発表した大傑作アルバムのタイトルは、
「Tapestry」(邦題は、つづれおり)ですね。
また、
松田聖子が20歳のときに出したエッセイは、
「青色のタペストリー」でした。

若い人は知らないだろうなあ……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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