おしい!食べられるんです!
カベンタケ 食
写真と文章/新井文彦

大きさは5センチほど。
表面は、つるつるしていて、ややしっとり。
まるでゼリービーンズのような肌触り。

緑のコケの間から、にょきっと顔を出した、
この鮮やかな黄色い物体が、きのこだということに、
びっくりする人もいるかもしれません。

食べる、食べられない、を当てるクイズに、
わけのわからない形をしたきのこが出題された場合、
「作者の意図」を読もうとする人、きっといますよね。

形や色からして、いかにも食べられそうもないけど、
「食べられない」という答えでは当たり前すぎる。
作者は、きっと、裏をかいているに違いない……。
いや、いや、
そのくらいは誰でも普通に考えるだろうから、
作者は、裏の裏をかいているにちがいない……。
いや、いや、いや……。

ちなみに、作者は、何も考えておりません(笑)!
気まぐれにきのこ写真を選んでいるだけでございます。

さて。
紅葉が本格的になる頃、阿寒の森では、
カベンタケを頻繁に見かけるようになります。
シカが通った獣道であったり、
落ち葉の間だったり、コケの間だったり、
地面の、あらゆる場所から、にょきにょき。
1メートル四方に、20本、30本は当たり前、
という感じで、群生している場合が多いですね。

根本が白っぽくて、鮮やかな黄色で、
表面がつるつるしてるのは共通項なんですけど、
こちらはキクの花弁の形、
あちらはバラの花弁の形、というように、
形や大きさが、もう、千差万別、いろいろ。
この、カベン(=花弁)タケ、という名前、
実に、ナイスネーミング、ですね。

そして、この、カベンタケ、食べられます。
食べられることは食べられるのですが、
それほどおいしいわけではありません。
ただ、煮ても、焼いても、色が変わらないんです。
ちょっと鮮やかすぎるほどの黄色ですけど、
料理の彩りとしては、使い勝手がいいかも。

関東から東の地域では、
カベンタケモドキ、という、
そっくりさんも発生するとのことなんですが、
(似ているけど、完全な別種!)
もし、カベンタケと間違って食べてしまっても、
おいしいか、まずいか、は別にして、
ほとんど害はないようです。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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