ザラエノヒトヨタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

まずは、じっくり、写真をお楽しみください。
もう、たまらないでしょ、このきのこ。

コケに覆われ、ほとんど土のようになった、
年代物の倒木に、じ〜っと視線をはわせていて、
見つけた瞬間、思わず「おお〜」と叫んでしまいました。

トトロ?
フクロウの後姿?
いやいや、
地上に舞い降りた妖精たち?

親指大のこんなきのこを見つけてしまったら、
頭の中で、どんどん空想がふくらんでいきます。
きのこを見るのは、本当に、楽しいなあ。

正体は、ザラエノヒトヨタケ。
ざらざらしているのは、柄ばかりではなく、
幼菌時には、傘もざらざら。
繊維状の毛でびっしりおおわれてます。

そう、見た目そのまま、という感じで、食不適。
食べたら口の中に繊維のくずが残りそうですね。

成長して、傘が開くと、繊維状の毛が落ちて、
透明感あふれる繊細な硝子細工のようになり、
やがて、周縁から中心部に向かって、
反り返りつつ、溶けるように黒くなっていきます。

ヒトヨタケの仲間は、その名のとおり、
一夜で傘が溶け、胞子を含んだ黒液と化すのですが、
このザラエノヒトヨタケは、溶け方が遅いというか、
傘が消失するまでに、2、3日くらい要します。

フタヨタケと名付けた方が……(笑)。

ちなみに、メインのきのこ写真の背景に、
白くて丸い光が写っていますけど、
写真用語的には、これを「丸ボケ」と言います。
なかなか素敵な雰囲気を醸し出しますよね。

ニコンの60mmマクロレンズは、
この丸ボケがすごくきれいに出るので、
つい、きらきらきのこ写真を量産してしまうのです。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
感想をおくる とじる ツイートする