第8回
寄り添い続けて、結果を出す。

糸井
ひとつ、新井さんにお訊きしたいんですが
「いい会社」の投資先を検討していて、
「いい会社」ではあるんだけど
「今は投資できないな」と判断した場合は
どうするんですか?
新井
寄り添いつづけます。

やはり「いい会社だな」と思ったってことは
ご縁をいただいたってことですから。
糸井
寄り添い続ける。
新井
簡単には「あきらめない」と、決めています。

相手があきらめてしまっても
わたしたちが、あきらめたくなかったら
わたしたちのほうからは、あきらめない。
糸井
そうなんですか。
新井
アドバイスを差し上げたりして
関わることをやめないということですね。

「貸しはがし」の真逆を行きたいんです。
糸井
おもしろいです。
新井
だって、そういう金融があってほしいから。

いいことをしている会社でも、
持続性がなければ社員が幸せになれない。
そうならないために、経営者には、
理念をまっとうしてくださいと
もう嫌気が差すくらい言わせていただく。
糸井
はい。
新井
でも、そうすることではじめて、
鎌倉投信を、信頼してくださるんですね。
糸井
そこまで、コミットしてくれるのかって。
そうかあ‥‥そうなんでしょうね。
西條
内か外かの話でいうと、
鎌倉投信は完全に「内側」ですよね。
新井
内側ですね。
糸井
効率の逆を行ってますよね、ここでも。
新井
そこまで内側に入り込んでコミットするのは
はたから見たらまったく無駄で、
時間のロスとしか思えないと思います。

でも、わたしたちがやりたいのは
「いい会社に投資しましょう」じゃなく
「いい会社を増やしましょう」で
その結果としての
「社会を豊かにしましょう」なので‥‥。
糸井
めんどくさいやり方を、せざるを得ない。
新井
でも「いいこと」さえやっていれば、
人は集まってくれるんだ、
という考えかたも
お金で付き合っているのと同じですよね。
糸井
重みのある言葉ですね。
新井
だから、わたしたち「厳しい」んです。
糸井
でしょうね。
新井
ベンチャー企業って
あきらめたら「失敗」になっちゃうだけ。
それだけなんです。

だから、あきらめさせないし、
わたしたちがあきらめられない何かを
持っているかどうかを
わたしたちは、相手に見たいんです。
糸井
じゃあそこは、
どんどん新しいアイデアを生まないと。
新井
そうなんです。先日、出した本では
利益をわざと「ずるさ」と書きました。

ある人に
利益を出すことは美しいことだし、
「ずるい」という表現は間違っていると
言われたんですが、そうじゃなくて。
糸井
ええ。
新井
ずるくて、一向にかまわないんです。

ただ「いいこと」をしているだけで
利益を出さなければ
社会を豊かになんて変えていけない。
糸井
おっしゃるとおりですね。
新井
きれいごとだと流されちゃうというか、
そこまで言わないと、
いいことしてるだけで満足している人には
気づいてもらないんです。
糸井
利益のぶんだけ、
社会に貢献できてるってことですもんね。
西條
説得力ありますよね。

新井さんが、
なかなかわかっていただけないときには、
「いいことをしても会社が続かなければ
 それって自己満足ですよね」
とはっきり言いますっておしゃっていて、
「うーん、たしかにそうだなあ」と。
糸井
最近、うちの会社の姿勢を表す言葉を
「やさしく、つよく、おもしろく」
と言ってるんです。
新井
はい。
糸井
ひとつめの「やさしく」がなかったら
みんなに、受け入れてもらえません。

ふたつめの「つよく」が、
「会社として立てるかどうか」の部分。
人を助けるにしても、
自分が弱かったら助けられませんから。
新井
ええ、ええ。
糸井
で、最後の「おもしろく」の部分こそが
「かせいでくれる」んです。
新井
なるほど。
糸井
だから、ぼくらの「おもしろく」と
新井さんの「ずるく」って
たぶん、同じものだと思うんですね。

具体的に言えば
アイデア、もしくはイノベーション。
新井
まさしく、そうです。
糸井
ああ、よくわかったなあ。
新井
わたしたちがお客さまに約束しているのは
「いい会社」を増やすことを通じて
「社会を豊かにしていくこと」なんです。

で、そういう社会を実現していくためには
どれだけ時間がかかろうと
わたしたちにとっては、あまり関係なくて。
糸井
その意味でも
短期的な高成長を狙うような考えかたとは
逆を行ってるわけですね。
新井
はい、それが「楽しい」わけですから
「あきらめる」という選択肢も、ないです。

お客さまにも、
「投資先とは、最後まで寄り添います」
と言ってます。
糸井
うん、うん。
新井
ただ、お客さまの財産に関しては
きっちり運用して結果は出します、と。
糸井
そこについては、プロですもんね。
新井
はい、もちろんです。
ただ、投資先には、最後まで寄り添う。
糸井
知り合ってしまった、
ご縁のある会社ということですね。
新井
わたしは、
「ご縁をどれだけ大事にできるか」が、
人生の価値だと思ってますから。

なぜ、わたしたちが投資したいと思うか、
その理由は、ひとつなんです。
糸井
はい。それは?
新井
死ぬ気でやるだろうなって思わせるほどの、
投資先の、本気さ。

それさえ感じられたら、大丈夫です。
それが、もっとも安心できる担保ですから。
<おわります>
2015-07-01-WED

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鎌倉投信・新井和宏さんの
『投資は「きれいごと」で成功する』と、
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「『進撃の巨人』の巨人とは何か?」という
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(序章はこちらのページで試読できます)
新井さんは金融・投資信託の、
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どちらの本も平易な文章で書かれているので
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