カワイイもの好きな人々。
(ただし、おじさんの部)

JR西荻窪駅から徒歩約5分。
最近できたばかりのきれいなカフェ。
日曜の昼下がりということもあって、
店内はたくさんの人々で静かに賑わっています。

北見和義さん(35)は、
額の汗をハンカチでぬぐいつつ、紙袋から
高さ約40センチのヌイグルミを取り出すと、
そっとテーブルの上に座らせるのでありました。

第40回
パンダはカワイイ。

山下 ‥‥‥‥ええと、
周囲の視線が若干気になりますが‥‥。
北見 みなさんチラッとこちらを見てから、
サッと視線をはずす感じです。
山下 ‥‥ともかく、パンダですね。
北見 はい、パンダです。
山下 ヌイグルミの。
北見 ええ、ヌイグルミの。
北見和義さん(独身)は、
サービス業系の会社にお勤めの35歳。
初夏を思わせる暑さのこの日、
北見さんはお住まいの江戸川区からわざわざ
西荻窪まで、たくさんのヌイグルミを抱えて
やってきてくださいました。
そうです、持ってきてくださったパンダは
この一匹だけではなかったのです。
暑い日に、大量のヌイグルミ‥‥。
汗をおかきになるのも無理からぬこと。
ひとつずつ、お話をうかがってまいりましょう。
山下 こちら、見た感じですと、
テディベアのようですが‥‥。
北見 そう、要はテディベアのパンダなんです。
山下
この手足がすごいですよね、リアルで。
北見
そこは樹脂でできてるんです。
山下
あ、樹脂ですか。
かちかちなので木製かと思いました。
この口の部分も?
北見
そうですね同じ樹脂です。
赤い鼻がチャームポイントですね。
山下
‥‥チャームポイント、はげているのは
これ、やっぱり、かわいらしくて
たくさんいじったからでしょうか。
北見
いや、最初からすこしはげてたんです、
‥‥ですが、そうですね、
だいぶいじったかもしれません(笑)。
山下
(笑)そうですか。
‥‥なるほどお、これは
テディベアなのですね‥‥。
北見
はい。もともとテディベアを集めてまして、
なかでもパンダのものは逃さず手に入れると、
そんな感じなんですよ。
山下 ということは、パンダ以外のテディベアも
たくさん持ってらっしゃる。
北見 ええと‥‥‥‥200ほど。
山下 に、200‥‥すごいですね。
‥‥‥‥あの、北見さん。
北見 はい?
山下 失礼ですが、北見さんご自身も、その‥‥
お見かけ、クマさん系ですよね?
北見 (笑)よく言われます。
山下 す、すみません、失礼なことを言って。
北見 いやいや、そういう体型ですから。
山下 クマさん系といっても「ひぐま」ではなく
やはりパンダっぽいです。ふくよかで。
北見 (笑)そうでしょうか。
山下 申し訳ありません、話がそれました。
ヌイグルミの話題に戻りましょう。
‥‥ええと、テディベアというと
ドイツのシュタイフ社が有名ですが、
これは違いますよね。
北見 はい、日本製です。
山下 日本製。
北見 集めているのは、
日本の作家さんのものだけなんです。
これは大塚勝俊さんというかたの作品ですね。
この子も(袋から出す)そうです。
山下 わ、小首かしげて!
北見 ね、いいでしょ?
山下 東急ハンズのエプロンして!
北見 愛くるしいでしょ?
これも(袋から出す)大塚さんの作品です。
山下 ‥‥いい表情ですねえ。
北見 ちいさめのパンダもあるんですよ、
ほら(山下の手にのせる)。
山下 わ、わ、わ。
北見 こういうのも(山下の手にのせる)。
山下 おお‥‥。
北見 こちらも(山下の手にのせる)。
山下 パンダーマン!
‥‥次々に出てきますね。
北見 まだあります(山下の手にのせる)。
山下 ‥‥‥‥あー、こうして
てのひらに乗せる作業が僕は大好きです。
北見 いいですよね、ちいさいのは。
どこにでも連れていけますから。
山下 連れていきますか。
北見 ええ。
山下 どこへでも。
北見 はい。
山下 会社へも。
北見 カバンに入れて。
お昼休みに出して、ちょっと遊びます。
山下 すばらしい!
‥‥ええと、ここまで見せていただいたのは、
すべてその大塚さんというかたの作品ですね。
北見 はい。
もうひとり好きな作家さんがいらして
ミヤタケイコさんというかたで、
こういうのをつくられてます(山下に渡す)。
山下 ‥‥‥‥インパクトありますねえ。
北見 上級者向けかもしれませんが。
山下 たしかに。一筋縄ではいかないパンダです。
北見 よーく、よーく見ていくと、
かわいいんです、これが。
山下 なるほどお‥‥。
それにしましても(テーブル上を眺め)、
なんと言いますか、北見さんのパンダは、
「パンダ具合」がいいですね。
北見 パンダ具合、ですか。
山下 はい、パンダ具合。
世の中にパンダ好きな人はたくさんいますし、
パンダのグッズもたくさんあります。
でも、ファンシーなものが多いですよね。
北見 そうかもしれませんね。
山下 北見さんのコレクションは
ファンシーすぎることがなくて、
でもやっぱりどれも愛くるしくて‥‥。
絶妙なのだと思うのです、パンダ具合が。
北見 ああ、ありがとうございます。
山下 つたない感想で恐縮です。
‥‥北見さんご自身は、この子たちの
どこにいちばんのかわいさを感じます?
北見 それは‥‥‥‥笑ってるところ?
山下 ほほう、笑ってるところですか。
北見 ほら、見てくださいこの口。
山下 あ、ほんとだ、笑ってる。
口角があがってるんですね。
北見 そうそう、口角があがってるんです。
ほら、この子も。
山下 あ、こっちの子もあがってます。
北見 ‥‥‥‥助けられますよ、実際。
山下 助けられる?
北見 疲れて帰ってきて部屋に入るとですね、
この子たちが200体、
こっちみて笑ってるんですよ。
そりゃあ元気になります。
山下 すばらしいです!
で、一緒に遊べば、
疲れはさらにふきとびますよね。
北見 はい!
山下 どんなことして遊ぶんです?
北見 「パンダの森」という遊びを。
山下 「パンダの森」、どんな遊びでしょう。
北見 ブライスというお人形がありますよね。
山下 ブライス、ありますね。
北見 まずブライスが遊びに来るんです、
宅配便で。おめかしして。
山下 ちょっと待ってください。
つまり、北見さんのお友だち‥‥
お友だちは女性ですか?
北見 ええ、女子です。
山下 その女子のお友だちから
宅配便でブライスが送られてくる、と。
北見 はい。
それで、設定として僕の部屋は
パンダの家ということになっているんです。
そこに遊びに来たブライスが、パンダ一家と
いちにちたのしく生活をしていくわけです。
その様子を、僕が写真に撮る‥‥。
「パンダの森」とはそういう遊びです。
山下 すばらしい!!
フォトセッションですね、物語のある。
北見 じつはブライスも持ってきました!
(袋から出す)
山下 うわあ、こちらもパンダですか!
北見 こういう着ぐるみが売ってるんです。
山下 しかも北見さん、赤ちゃん抱っこしてます!
北見 ちょっと待ってくださいね‥‥
これをとると(着ぐるみを脱がす)、
なかにも、ほら‥‥
山下 パンダがあ!
北見 この洋服は友だちがつくってくれました。
山下 女子の。
北見 はい、女子の。
山下 北見さん、このテーブルの上にも、これ、
パンダが森のように並んでますよ。
せっかくですからブライスと一緒に
写真を撮りませんか。
北見 そうしましょう!
では、もう一度着ぐるみを着せますね。
よいしょ‥‥ん? あれ? ああもう!
山下 あ、あせらなくて大丈夫ですよ。
北見 ‥‥着せました!(並べる)
山下 はい、では撮りまーす。
ふたり やったー(小さく拍手)。
山下 ‥‥最後に北見さん、
このなかでいちばんお気に入りの子を
教えていただけますでしょうか。
北見 いちばんですか‥‥。
うーん、やっぱりこれですかねえ。
山下 あ、最初に見せていただいた。
北見 ええ、こいつはもう僕の分身ですから。
名前があるんですよ。
山下 な、なんていう名前ですか?
北見 パパンダといいます。
この名前は僕のニックネームでもあるんです。
山下 北見さんも、パパンダなんですね!
ではパパンダふたりで写真を撮りましょう。
北見 はい(パパンダを手に取り)、
こんな感じでしょうか。
山下 いや、あのやはりさっきみたいな、
横抱きがいいと思うのですが、
赤ちゃん抱っこで。
北見 こうですか?
山下 そうそうそう、それで!
じゃ、撮りまーす。
北見 よしよしよしよし(ゆする)。
山下 ああ、ほんとうに、分身なんですねえ‥‥。



口角が思わずあがる、かわいさでありました。

僕たちふたりをそっとしておいてくださった、
カフェ「11」のスタッフの皆様、
ありがとうございました。
カレーがほんとにおいしかったです!!

[eleven]
東京都杉並区西荻南3-18-13
TEL 03-5336-6157
OPEN 12:00〜21:00
定休日 水曜日、第三火曜日

2005-06-22-WED

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