主婦と科学。
家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所

研究レポート47
「おばあちゃん」こそが人類進化のカギ?!
──おばあちゃんの科学。



ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。

最近、つくづく痛感するのが
「おばあちゃん」のありがたさ。
研究員Aの母親、
つまり研究員B(3歳)や研究員C(1歳)
にとってはおばあちゃんにあたる人のことです。
お互いの家が近くはないので
電車で2〜3時間くらいかかるのですが
月に何回か手伝いに来てくれます。
所長(夫)が出張の時も、です。
ありがたやありがたや。

まず人手が増えて家事その他いろいろ
手伝ってもらえることが助かる!
研究員Aは羽のばしできてしまうのです。

それに加えた「おばあちゃん」のすごさは
まさに子育ての「経験」と「知恵」!

「経験」があるからか、余裕のペースで
孫たちをうまく「統率」しています。
研究員Aなんかは逆に
子どもらに振り回されちゃうんですけどねー。

「知恵」があるからか、孫たちがダダをこねたときに
バカやって気をそらすのも上手い!
よくもまあ、そこまでアホになれるわと
少々引きつつも、尊敬してしまいます。

研究員Aでなくても
小さいお子さんがいるお母さんの中には
実家に帰ったときに
「『ジジババ』という人手があるっていいわあ」
と思った方がいるかもしれません。

実は、このような「おばあさん」の存在は
人類が他の生物に比べて
飛躍的に発展するためのキーだった!
という仮説があるのです。
その名も「おばあさん仮説」。

というわけで今回のレポートは
このいかにも面白げな「おばあさん仮説」を
紹介することにします〜。

繁殖力を失ったあとも生き続ける
「人間のメス」の、動物としての不思議。

「おばあさん仮説」とは
クリスティン・ホークスをはじめとする
何人かの人類学者が提唱しているものです。
「おばあさん効果」と呼ばれることもあります。
それは‥‥

今 日 の 仮 説

「女性が自らの出産・育児を終えたあと
 その知恵と経験を生かして
 自分の娘や血縁者の子育てを援助することにより
 結局は繁殖成功度を
 上昇させることができたのでは?」

──というものです。

そもそも、人間の『メス』のように
生殖力を失ったあとも
長いこと生き続ける生物は例外的な存在。
基本的に生物は「寿命」と「繁殖年齢」は
ほぼ一致しているのです。
現に人間の『オス』はそうですものね。
男性の場合は生殖力は衰えるものの
死ぬ間際まで原理的に繁殖は可能です。

人間のメスの場合は、がんばったとしても
50歳を超えて出産することはまずあり得ない!
なのに、それから数十年も生き続けます。
これは本来、進化上不利なはず。
なんでだろう? と考えたわけです。

さて、ここで人間と他の生物の違いを
取り上げてみましょう〜。
ひとつには
身体の大きさの割には脳が大きいこと
が挙げられますね。

でも、頭が大きすぎると、出産が大変に!
母子ともにキケン。
ですから、生まれた後に脳が発達する方が
「有利」な個体になります。
だから、人間は未熟な状態で
産まれくるというのです。

未熟な状態で産まれてきちゃうので
「人間の子育て」はとても負担が大きい!
同じほ乳類でも、野生動物なんて
産まれて数時間で立ち上がっていますよね。
人間は自力で歩けるようになるまで
1年前後かかりますもの。
人間の育児は共同ですることが前提。
そのための存在の「おばあさん」なのです。

確かに、人間は「共同で子育て」するのが
基本だと言われると
深く、ふかあああく頷いてしまう研究員Aです。
我が家も核家族なので
研究員B&Cと24時間一緒にいた
あの一年間は…(遠い目)。
大変すぎて、そのあたりの確かな記憶がありません。

ましてや、頼る実家がなかったり
パパの仕事が忙しかったりの
「母子家庭状態」のおうちでは
どれだけしんどいことか。

子どものパワフルでぶっといベクトルが
特定の人だけに集中するから
しかも「休憩時間」がないから
精神的に消耗するんですよね〜。
だから、「他のオトナ」がもう一人
いてくれるだけでもだいぶ違う。
そういう意味でも「共同で子育て」は
理にかなっているなと思うわけです。

研究員Aのグチ混じりの話はこの辺りにして
話を元に戻しましょう。
要するに、おばあさんは年老いてから出産して
母子共に生命の危機にさらされるよりは
身内の子育ての手助けをした方が
進化上おトクだったのでは? ということです。

おばあさんが存在したおかげで
・赤ちゃんは早く乳離れができ、出産回数が増す。
・脳が大きい赤ちゃんを育てることができた。
という恩恵を受けることができ
これが人類の発展に役立った! というのです。

3万年より前には
「おじいさんとおばあさん」は少なかった!

ここに、先進国の現代人と
チンパンジーと比較したこんなデータがあります。
ちなみに、「離乳」とは赤ちゃんが
お母さんのおっぱいから離れて
普通に食事をとる年齢のこと、です。

 
離乳年齢
出産間隔
先進国現代人
1.5歳
2年
チンパンジー
4.8歳
5年

ちなみに、寿命ですが
現代人はチンパンジーの約2倍。
現代人の離乳時期がいかに早いかがわかりますよね。
だから、出産間隔を短くすることが
できるってわけです。

もちろん、このおばあさん仮説には反論もあります。
例えば「ベネズエラの焼畑農耕民の社会では
その仮説にあてはまらないよーん」だとか。
あくまで仮説ですからね。

でも、最近(今年の7月)
このおばあさん仮説を補強する
研究結果が発表されました。詳しくはこちら
クロマニヨン人らの化石の「歯」を調べて
年齢を推定したところ、
約3万年前に年配者の割合が
飛躍的に伸びているのだとか。
なんと祖父母世代が一気に5倍に達したそうです。
そして、この時期にちょうど
芸術や埋葬文化が発達しています。

この調査をしたミシガン大の
レイチェル・キャスバリは
この結果も年配者が経験を生かし
生存競争に協力した「おばあさん仮説」と
結びつけています。

祖父母世代が急激に増加しているなんて
現代の先進国のようですね。
今の日本は少子高齢化が深刻な問題となっていますが
前述の調査結果を信頼するならば
この高齢化は
「文化の発達」「人類の繁栄」
のきっかけになるかもしれません!

実際、今の世の中は元気なお年寄りも増えています。
知恵と経験の宝庫であるお年寄りに
大いに活躍してもらわない手はありません。
特に育児〜。
「おばあさん」だけでなく
それこそおじいさんだって。
もちろん、血縁者だけに限らず、ね。

ひょっとしたら、ひょっとしたらですよ。
この「おばあさん仮説」は少子化・高齢化を
一挙に解決するためのキーになるかもしれません。
さすがに楽観的すぎですがー。

研究員Aのくせに、時事問題なんて
身の丈に合わないことまで話を広げちゃいました。
すっかり落ち着かない気分になりましたので
このあたりで退散させて頂きます。



参考文献
ヒト、この不思議な生き物はどこから来たのか
長谷川眞理子編著 ウェッジ選書

参考サイト
進化研究と社会 進化心理学・人間行動

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2004-10-22
-FRI


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