よしくみ
チェコ時間って、
5時ぐらいになったら、
スタッフは人形動かしてても
帰っちゃうらしいんです。
シェフ
え、ほんと?
shino
うん、それは当然だと思う。
えー。

よしくみ
だから後は監督がコツコツ、みたいな。
shino
金曜日なんて5時どころか
12時ぐらいに出てっちゃうのよ。
シェフ
12時って半ドン?
ぐっさん
半ドン!
いいなあ。
shino
それで2年だから、
短いような気がする、私的には。
シェフ
しかも、お話が、
すごくわかりやすかったですよね。
チェコの人形アニメっていうと
難解だとか、ねえ?
やえ
シュールな感じが。
シェフ
シュールな部分も、あるんだけど、
ストーリーはすごい分かりやすかった。
やえ
そうですね。
シェフ
ちなみに簡単に言うと、
悪の帝王にさらわれた、
屋根裏に住むポムネンカっていう人形を巡って
友だちたちが助けに行くという、
すごくシンプルなお話です。
山下
それが二重構造になってて、
人間が出てくると、人形はただの人形になる。
人間がいなくなると動き出す。
やえ
そうそう。
山下
おもちゃのチャチャチャ。

shino
そうですね。
ゆーないと
混ざるんですよね。
よしくみ
猫ちゃんだけが両方の世界に存在してる。
シェフ
あの猫って悪者? いい者?
やまもと
あれは悪者ですね。
『不思議の国のアリス』でも、
ちょっと悪いものとして
アリスを翻弄しますよね、
そういう存在かな。
シェフ
そして、あの悪いやつら、
もうほんとに気持ちが悪い。

ゆーないと
おっさんですよね。
胸像みたいな人。
やえ
「フラヴァ」ですね。
なんで胸像なんでしょうね
shino
権力の象徴なんだと思う。
かつての共産主義者の像は
まさにあんな感じで、
それが町のそこら中にあった。
それって怖いよね。
民主化後に取り外されたり
壊されたりしたから
今はもうないけど‥‥だからって、
さすがにどこの家の屋根裏にも
あんなものが転がってるわけじゃないよ。
シェフ
あの人、有名な人なんですか?
shino
わたしもちょっと
よく分からないんですけれども。
よしくみ
有名なコメディ俳優だと聞きました。
shino
あの、チェコって、役者さんたちの
有名、有名じゃないっていうのが、
日本みたいな価値では測られないんですよ。
たとえば舞台役者はテレビには出ない。
テレビの役者さんはテレビだけ。
滅多に被らないんですよね。
映画とテレビと舞台。
昔、チェコは共産主義で
テレビにコマーシャルが
流れなかったんですけど、
その影響でずーっとテレビも
国営放送しかなかったんですね。
で、やっと民営になって
コマーシャルが入るようになって、
ある舞台俳優さんが
コーヒーのコマーシャルに出たら、
そんなことまでして金がほしいのかって
すごい叩かれて(笑)。
へえ。

shino
私が疎いだけなのかもしれないけど、
一般的な露出度がすごく少ないので、
「フラヴァ」役のひとも
コメディアンとして有名なのかもしれません。
シェフ
日本ではこれ、吹き替えにはならない?
よしくみ
あ、吹き替えになってます。
ゆーないと
チラシで発見してしまいました。
やえ
発見しました、私も。
ゆーないと
フラヴァが、
佐野史郎さん!
やえ
ポムネンカが貫地谷しほりさん!
山下
なるほど、フラヴァが佐野史郎さん。
やまもと
佐野さんがたまたますごーい
チェコアニメファンなんです。
もともと、カフカが好きで、
シュールっていうか、
もともとその雰囲気をお持ちの方ですけども、
なにしろお詳しくて。
アフレコのときも貫地谷さんに
いかにイジー・バルタ監督がすごい人かって
すごく説明してくださって。
シェフ
そういう人がやってくれてよかったですね。

ところで、ぐっさんは、
舞台美術や、アニメーション、ジブリ、
シルク・ドゥ・ソレイユなど、
パフォーマンスアートに関するコンテンツは
とても多いよね。
どうでしたか?
ぐっさん
僕、『ウォルスとグルミット』が
すごい好きなんですけど、
『ウォルスとグルミット』が
ファンタジーなのに対して、
すごく現実が近いところにある世界ですよね。
現実的に置いてあるものが
ほんとに動き出すっていう、
完璧に作られた世界じゃなくて、
置いてあるものが動き出すっていうところが
おもしろかったなぁ。
あと、悪の、悪役のちょっとグロさが、ねえ。
やえ
ああ、そうですね。
シェフ
悪い連中の描き方が、すごかったよね。
虫の姿をした悪いやつが
ごそごそ耳に入っていくとか。
ぐっさん

そうそうそうそう。
あと、水が迫ってくるところとか、
「子どもながらにちょっと恐い」表現が
ひじょうに面白かったです。

シェフ
水とか、シーツが雲になるとか、
あのあたりは説明なしで気持ちよかったね。
山下
気持ちいいし、ちょっと気持ち悪いし、
山下
これ、チェコでは子どもむけなんでしょうか。
shino
子どもも観に行ってますけど、
あんまり区分けはしてないと思います。
全く世の中が子ども文化ではないというか、
子ども対象の社会ではないので。
チェコっていう国自体が。
やえ
あー。
山下
ほー。
shino
全く媚びていない国なので、子どもに対して。
シェフ
ほー。
ぐっさん
こういうのを作るときも
子どもがこうやって観るんだろう、
みたいなところはあまり加味せずに
作るものなんですか?
shino
まったく。
イジー・バルタや
シュヴァンクマイエルに
代表されるアニメーションは、
彼らの芸術作品だという考えですね。
シュヴァンクマイエルは、自分のことを
アニメーション作家というより
シュールリアリストといってるし。
共産主義で表現が制限されていた時に、
映画制作でいちばん検閲がゆるかったのが
童話、それとアニメだったそうなんです。
で、その頃既に活躍していたのがトルンカで、
それにシュヴァンクマイエル、バルタが続いて
作家性の強いものがたくさん作られた。
今、「チェコ・アニメ」といってみんなが
思い描くようなのはこの流れですよね。
だから純粋な子供向けのアニメーション
というのとは違いますね。
よしくみ
多分、今回の作品は国内向けというよりも
海外に売ることを考えているし、
お金も海外から出てたりとかするので、
プロデューサーが必要以上に、
子どもが観ても
大丈夫なようにしてねーって。
でもやっぱりバルタは
もっとグロくしたかった(笑)。
シェフ
へえー。
やえ
あー。
よしくみ
多分、これ、普通に観てるのよりも
もっと奥が深くて、
ポムネンカをさらうフラヴァっていうのも、
もっと──。
シェフ
かどわかす?
よしくみ
そう。いやらしーい、のが、
やっぱり元になってて、
でもそれを前面的には出してない。
シェフ
あ、もうちょっと変態が?
よしくみ
そうそう、もう、そうです!
シェフ
もっと性が入るんだ、
彼のメタファーには。
もっとどろどろしたものが、
でも童話の本質ってそこにあるよね。
よしくみ
そうでしょうね。
後ろにすごいどろどろしたものが。
シェフ
グリムとかね、そうですよね。
山下
隠してありますよね、言いたいことをね。
シェフ
うん、うん。
よしくみ
そういう目線で観ると、
あ、ここも何かもっと
こういうことなんだなっていうのが‥‥
ゆーないと
ありそうですねー。
 
(つづきます!)
2009-08-12-WED

(c)BIO ILLUSION s.r.o.


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『屋根裏のポムネンカ』の
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『屋根裏のポムネンカ』
日本版公式サイト
8月1日よりユーロスペース、
シネマート心斎橋にてロードショー、
ほか全国順次公開

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