彼方からの手紙
 


クラッカーMC'S

ボーズ これはね、すごいハードコアな曲、
激しい曲をわざとつくったんです。
で、その、かっこつけてるなかで、
アジテーション風に叫んでるんですが、
よーく聴くと、ただただ、
当たり前のことを言ってるっていう。
糸井 はははははは、ほんとだ。
「結論 夏はあつい」
「日ごとに短縮 日照時間」(笑)。
ボーズ コンセプチュアルなんですけど。
これ、18年越しでばらすと、
なんでタイトルが
『クラッカーMC'S』かっていうと、
あたり前田のクラッカーからきてるんです。
糸井 あー(笑)、
当たり前のこと言ってる曲だから。
ボーズ そうなんです。
で、さらにもうひとつ奥をいうと、
もともと、なんかもったいつけて
すごく当たり前のことを言ってる曲ってのが
世の中にはあるなあっていう気分もあって。
糸井 はいはい(笑)。
ボーズ ちょっとそういうイヤミも入ってる。
で、当たり前のことだけを
ハードなラップに乗せて言ってる
バカバカしさっていうのを過剰にして、
コントみたいにしちゃってる。
糸井 ああ、それで、
「社会に反逆 俺は歌うテロリスト」
っていうのが突然出てくるんだ(笑)。
ボーズ そうなんですよ。そこだけ(笑)。
で、あとは当たり前のことだけが
どんどん過剰になっていくっていう。
糸井 そういう、きちんとした
アンチテーゼがあったんだね。
ステレオタイプなことに対する。
ボーズ そうなんですよ。
あのころって、ラップっていうのが、
すごい流行りだしたんだけど、
なんか、みんながギャングみたいな格好して
ラップをやるみたいな
もう、当たり前なことばっかりが多くて。
糸井 うん。
ボーズ そんなつもりで、
ぼくらラップやってるんじゃない
っていうようなことを、すごく、なんか、
かなり、まわりくどく表現して(笑)。
でも、聞きざわりは
かっこいいラップに聞こえるといいな
と思って。
糸井 つまり、浅く流して聴く人に、
「ぼくたちがそういう人だと
 誤解されてもしょうがない」
っていう覚悟もあるわけですね。
ボーズ そうですね(笑)。
糸井 そういう危ないところを
けっこう踏んでるよね、
スチャダラパーは。
ボーズ そうですね。
それはもう、
そういうコントだと思って
やっているというか。
糸井 でもさ、ヘタするとこれ、
6割8分ぐらいの人が
まちがってるかもしれない。
ボーズ そうなんですよねー(笑)!
糸井 ボーズさんたちは、
ヒマについてぐだぐだ言ってるけど、
心の奥にあるのは
反逆の歌うテロリストなんですね!
みたいな人が‥‥。
ボーズ ははははは。
実際、あります、そういう反応は。
それもありです。
両方で行かないとダメです、やっぱり。
そういうふうに思ってくれてありがとう、
みたいなことも、ありで。
糸井 その両輪が必要なんだね(笑)。
世間を狭くしないように気をつけながら、
歌う、と。
ボーズ はい。
糸井 だけど、ここにある視点も、
『ヒマの過ごし方』と一緒で、
ボーズくんたちが
ずっと持ってるものというか。
ボーズ そうですね。
だから、ほんとにぼくらが
思ってること、言いたいことは、
この3枚目のアルバムくらいまでに、
だいたいもう言っているという。
糸井 そうだねぇ(笑)。
ボーズ やっぱり、いまだに
こういう気持ち、ありますから。
だから、いまだと、
『さくら』っていう歌を、
ぼくらがこうつくる、みたいな。
糸井 はいはいはい(笑)。
ボーズ こういう皮肉は好きですね、
やっぱり。
糸井 あと、今人的に、この曲で、
ぜひ触れておきたいのは、
いちばん最後のフレーズですね。
「夜になったらどうするんですか
 夜になったらねるんです」
ボーズ あー(笑)、これは、まぁ、
『北の国から』に出てくるセリフです。
糸井 オレ、それ、知らなかったんです。
ボーズ あ、ほんとですか?
これが先ですか?
糸井 そう。
ボーズ あ、それ、すごい(笑)!
糸井 ビューティフルでしょ。
ボーズ すごくうれしいです。
糸井 知らないときからもう、
ほんっとうに、このフレーズが好きで。
ボーズ はははははは。
糸井 最後の最後に出てくるんだよね。
ボーズ 当たり前の歌の最後の締めが、
黒板五郎が、純に言うセリフ。
「こんな暗いのに、
 テレビもなくてどうするんですか。
 冷蔵庫もないじゃないですか。
 夜になったらどうするんですか」
「夜になったら寝るんです」
っていうのがあって、
あれがおもしろくて。
糸井 ぼくは、うちの娘もこっちが先だと思いますよ。
ボーズ ほんとうですか(笑)。
糸井 「夜になったらどうするんですか
 夜になったらねるんです」
いいなぁ。うちの娘なんかも、
絶対、ドラマより、
こっちのほうで先に知ってると思う。
車の中でずっと聴いてたからね。
ボーズ それ、うれしいですね。
ほんと、つくってるときは、
中学生くらいの子が、
いつかどこかで『北の国から』を観て
気づいて喜んだらうれしいなぁ、
みたいに思ってましたから。
(つづきます)

 

2010-08-18-WED



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