神様をさがしに。  ~高尾山の巻~  どうか、神様! と、願いをかけるとき‥‥ 我々はいったい どこに呼びかけているのでしょう。 おやしろの中に? それとも、天に向かって? それとも、自分の中の奥の底? * 神様の居場所をさがしに、 おかしな一団が ぷらりと旅に出ることにしました。
第7回 山は神様。
飯縄大権現を拝観し、
薬王院の奥へ奥へと進む一行です。
小さなリュックを背負って
(ひとりは「手さげかばん」ですが)
山をたのしく登りながら、
我々は知らず知らずのうちに
古来より人びとが願いをかけてきた何かに
近づいていく‥‥のでございます。

上には本社があります。


本社の手前、階段脇に
たくさんの像。
ソブエさん、ていねいに
見て回ります。

草木のあいだに
子供の像
ソブエ かわいいねぇ!
── 不動明王に従う
36人の童子たち、だそうですよ。

本堂からさらに階段をのぼって
本社に到着。


ここにも天狗がいます。


ここの天狗、
とてもかっこいい。


「飯縄大権現」の文字が
掲げてあります。
ハタナカ 飯縄大権現は、
山岳信仰と修験道が合わさった、
神仏習合の神様と言えると思います。
修験道のお寺や神社にいることが多いですね。

飯縄大権現の使者、
きつねの姿も見えます。
── 結局、飯縄大権現は、
神様なんですか?
それとも仏様なんですか?
ハタナカ うーん。
まぁ言えば、ちょうど中間。
全員 中間!
ハタナカ 神仏習合、神仏分離、
いろんな考えがまじったり離れたり、
栄枯盛衰さまざまな時代を経て、
この場所は、ここまできたのでしょう。
── 必要とされる考えは
時代によって変わるから‥‥。
ハタナカ 人々が願いをかけてきたものの跡が
残っている場所は
たくさんあるんですけれども、
ここ高尾山は、
そのまざりぐあいがすごいと言えます。
── 飯縄大権現は、
カラス天狗に似たお姿でしたが。
ハタナカ きっと、天狗より先に
飯縄大権現があって、
天狗という考えや姿は
あとから追いかけてきたものなんでしょうね。
飯縄大権現は、もともとは、
信州の飯縄山の
山岳信仰が発祥の神様です。

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本堂の上に本社があって、
さらに上に続く階段があります。
ハタナカ 奥の院ですね。
ソブエ 行こう、行こう。

ここが奥の院です。
ソブエ 説明書きがあるよ。
── えーっと、
(お堂の横の説明書きを読む)
もともと、いま本堂の場所にあったものを、
明治時代に移築して
不動堂としたもの、だそうです。
ハタナカ 木造の不動明王立像が
安置してあるようですね。
オイカワ いまは、中は見られないんですね。
ハタナカ あ‥‥あっちに
もうひとつ、何か建ってますよ。

おやしろがありました。
── ハタナカさん、これは、
鳥居があるから
神社ですよね?
ハタナカ これは、浅間神社ですね。
オイカワ 「浅間神社」って、よくありますけど‥‥。
ハタナカ 富士山の神様です。
富士山をあおぐ場所に
建っていることが多いです。

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ソブエ 晴れてたら、
ここからも富士山が
見えるのかなぁ。
‥‥いまは、天気が悪いから
くもしかみえないけど。

くも
ソブエ プププププ。
足もとにも
くも発見ー!
____ オワァァ、立派なくもが!
オイカワ このくもはいつも
富士山をあおいでるんですね。
ハタナカ 富士山が見えるここが、
この山でいちばんの
場所なのかもしれないなぁ。
── 山から山を仰ぎ見る場所が。
ハタナカ はい。
山の神様の様式というのは、つまり──
まず、民衆の暮らす場所には
「里宮」と呼ばれるものがあります。
それは、今日ぼくらが最初に訪れた
遥拝所のような意味合いの神社です。
そして、山の上には「奥宮」があります。
富士山を臨む場所だったり、
その場所が富士登山の
経路となっている場合には、
浅間神社が建立されます。
オイカワ 山の上であり、なおかつ
富士山が見えるこの場所というのは
とってもいい場所なんですね。
ハタナカ 昔から、山は神様だったんですよ。
その「もともとのいい場所」は、
みんなが畏怖を抱く場所ですから、
修験道、富士山信仰、仏教、
みんなにとっていい場所です。
ソブエ だから、いろんなものが建つんだね。
── もともとここが人びとの
信仰が集まる場所だったとして‥‥
(資料を見る)
高尾山薬王院として
開創したのが、奈良時代の
天平16年。
聖武天皇の勅願により
行基によって開山という
歴史が残っているそうです。
ハタナカ そのときは、薬師如来がご本尊。
ソブエ 飯縄大権現はいつ登場するんでしょうか。
ハタナカ 14世紀に
高尾山薬王院中興の祖といわれる
俊源大徳の前に、
飯縄大権現が姿をあらわしたことから、
飯縄大権現をまつる
修験道の道場となったそうです。
そのときの繁栄の大きな要因は、
飯縄大権現が戦国武将の守り神と
されていたことにあったのでしょう。
── そして、現在は
新義真言宗智山派に所属する大本山。
ハタナカ 神仏習合の施設というのはつまり、
神社でもお寺でもないというのが
いちばん正確なんだと思います。
ソブエ どっちでもない、か。
ハタナカ お薬師さんがいて、
それを守護する役割として
飯綱権現様がいる。
わたしたちは、真言宗の祈祷を受けたのですが、
持って帰るのは、いわば神様の分身です。
ここは、ある時期のこの国の、
典型的な信仰の姿を
残していると言えるのかもしれません。
オイカワ そういう、複雑に絡み合った歴史を。
ソブエ 高尾山にハイキングに来て。
── 少しずつ知っていく、
というわけですね。
ソブエ さて、どうしよう、これから。
ハタナカ どうしましょうね。
 
(つづく)
ハタナカ
ハタナカメモ
飯縄山


長野県北部にある
標高1917メートルの山。
飯縄山の名称は、
ご飯のように
食用となる砂という意味をもつ
「飯砂(いいずな)」に由来します。
これは菌類など微生物の複合体、
「テングノムギメシ」
(天狗の麦飯)のことを指し、
以前は飯縄山中に生息していたものの
現在は絶滅したそうです。

浅間神社

富士山を神様と
見立ててお祀りする神社で、
富士山麓をはじめ、
富士山が眺められる地に
数多く見受けられます。
浅間は「せんげん」と読みますが、
かつては軽井沢の近くの
浅間山と同様に、
「あさま」と読んでいました。
「あさま」は火山を示す古語で、
阿蘇山の「あそ」も
同じ系列の言葉だといわれています。
2010-09-30-THU